福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -009/036page
いうことである。そうした情報提供や説明が必要な理由について,平成10年9月に出された中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」では,次のように述べられている。
すなわち,「学校が地域住民の信頼にこたえ,家庭や地域が連携協力して教育活動を展開するためには,学校を開かれたものにするとともに,学校の経営責任を明らかにするための取組が必要である。このような観点から,学校の教育目標とそれに基づく具体的な教育計画,またその実施状況についての自己評価を,それぞれ,保護者や地域住民に説明することが必要である」と。一層具体的に言えば,学校は,PTAの総会,学校通信,パンフレット,自治体や教育委員会の広報誌,インターネット情報あるいは授業の公開など,さまざまな機会やメディアを活用して,学校の教育活動に関する適切な情報を保護者や地域住民に提供することが必要である,と指摘されている。
中教審によるこうした指摘にもあらわれているように,学校の教育目標や教育課程には,適切な教育活動を展開するために学校の内部で使われるということだけではなく,学校の外に向けて学校の教育活動に対する考え方とその達成状況を説明するための資料として使われるという役割をもつことが期待されている。学校の教育目標や教育課程については,そうした動向を踏まえて,その内容や在り方を見直すことが必要な時期が来ている,とみることができる。
学校と地域との新しい関係を構築するためのもう一つの方策は,学校評議員制の導入を図るということである。前記の中教審答申によって提起された学校評議員制は既にいくつかの自治体で実施されており,今後さらに広がるすう勢にある。
学校評議員制の導入ということを含めて,今後,学校は保護者や地域住民の学校に対する二ーズや意見を的確に把握し,学校運営に適切に反映させていくための努力を継続的に行っていく必要がある。その際,最も大切なことは,教育の仕事に携わる者としての教師の専門性の向上を図り,専門的な知見に基づく適切な対応を行うということである。保護者や地域住民の二ーズや意見はあくまで教師の高い専門性に基づく考え方や判断によって生かされ,その意味を与えられることになる。
〔参考文献〕
○ 山口満監修,愛知県一色中学校著『地域に根ざした総合学習,地域のひと・もの・こととの共生を求めて』黎明書房,平成12年
○ 山口満・谷川彰英編著『趣味を生かした総合的学習』協同出版,平成11年
○ 山口満編著『現代カリキュラム研究』学文社,平成13年
(山ロ満先生のプロフィ-ル)
昭和12年,京都府生まれ。昭和38年3月,東京教育大学大学院教育学研究科修了。秋田大学,奈良教育大学,筑波大学等を経て,現在,筑波大学名誉教授。専門は教育課程論。第16・17期中央教育審議会専門委員。高等学校学習指導要領作成協力者会議主査(総則編,特別活動編)。主な著書に編著『現代カリキュラム研究』学文社,平成13年など。