福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -012/036page

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保障するとともに,柔軟に自分の考えをつくり変えていく点を重視して実施した。主に軍事力,銃や人種差別の問題が論点となり,討論の最中にも立場の動く生徒が出てきて,活発な意見交流が展開された。

名札マグネットを活用しながらの全体討論の場面
《名札マグネットを活用しながらの全体討論の場面》

ある生徒の考えの変容
   
@ 単元の最初の段階
肯定:
いろいろなことにおいて世界第1位を占めているから,トップリーダーでもおかしくない。
A 学習班での調査結果の共有化後の段階
中立:
経済力・軍事力の発表まではトップリーダーだと思っていたが,アメリカのかかえる問題を聞いて,どちらとも言えないと思うようになった。
B 全体討論後の最終的な段階
否定:
○○君が言ったようにトップリーダーなんて別になくてもいいと思う。いくら強い国でも,その国にできることには限界がある。その国がよい方向に変わろうとするなら,まずはその国の国民がまとまるとともに,他の国と協力し合うことが大切だと思う。

◆ このように立場の大きく動いた生徒,逆に一貫して動かなかった生徒など様々であったが,生徒たちは,自分の考えと友だちの考えを比較検討していく過程で,アメリカ合衆国の特色を多面的・多角的にとらえていった。

(3) 班活動の改善を図るために,調査班,学習班での活動の節目に,右のような「ふりかえりカード」を使って活動状況の見直しを行わせた。生徒たちは,互いのよさを認め合ったり,学び合うことや協力し合うことの大切さを実感したりすることができた。そして,次の活動のステップにしていった。

ふりかえりカード
《ふりかえりカード》

 

W 実践を振り返って

授業後の生徒の感想

○ 様々な班で活動することで,様々な考えを知ることができ,自分の考えを深めることができた。他の国や日本の学習でも,このクロス・セッションをやってみたい。
○ テーマごとに班に分かれたため調べやすかった。学習班の中での発表も少人数でわかりやすかった。普段の授業で発表しない人も発表するので,よいことだと思った。
○ みんなと考えて,みんなと話し合うこと,それから協力し合うことができて大変楽しく授業に取り組めた。また,自分で考える力を身に付けておかなければならないこと,他の考えを尊重していくことが大切であると実感できた。

1 成 果

(1) クロス・セッションでは,思考力,判断力,表現力の育成はもちろん,双方向性を持った交流関係が成立するため,責任感,協力性,連帯感も育ち,生徒一人一人が主体的に学習に取り組めるようになることが分かった。

(2) 今回は教師が課題を提示したが,生徒が課題を設定したり,学習の目的に応じて様々な班を組織し多様な授業形態を組み合わせたりして,学習を発展させていくことが可能であることが分かった。

2 課 題

(1) 課題の設定の仕方,グループ間の活動の差を埋めていく手立て,班を組み替える際の支援の在り方,グループリーダーの育成等,調整役としての教師の役割について細部にわたる検討が必要である。

(2) 調べ方,まとめ方,発表の仕方,話し合いの仕方等の学習技能の指導を計画的・継続的に行い高めていく必要性を感じた。

〈参考・引用文献〉
筒井昌博編著:「ジグソー学習入門」明治図書
                      (平成11年)


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