福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -013/036page

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連載コーナー
 
「いま、子供たちは!?」
〜見えない心に気づくとき〜
 
教育センター学習指導部


 133号  中学校の事例

 134号  小学校の事例
 135号  高等学校の事例


*登場する人物は,すべて仮名です。


1 学級での出来事

佐藤先生は,教職経験10年目の男の先生です。
今年度は,3年生の担任。昨年からの学級を持ち上がり,新年度がスタートしました。

それから1か月が過ぎた学級での佐藤先生の数学の授業です。
「この問題を誰かに解いてもらおう。」
「誰にやってもらうかなあ。じゃあ,はい,田中やってみろ。」
みんなきちんとして,整然と授業が進んでいました。休み時間はちょっと羽目をはずしがちな生徒も,数学の時間は少し緊張した面持ちです。いつものありふれた日常の一コマでした。
そんな時でした。

佐藤先生
何だ,わかんないのか。しょうがないな。じゃあ,こういう時は野球部だな,鈴木,代表でやってみろ。
鈴木君
………。
佐藤先生
こんなのもわかんないのか,それじゃあ野球部キャップテン失格だな。
鈴木君
うるせんだよ。

一言叫んだかと思うと,「ウワー」と大声を出しながら鈴木君はかけだしていました。そして,廊下からは,ドカンドカンと大きな音が響いてきました。佐藤先生は一瞬何が起こったのか理解できず,頭の中が真っ白な状態でしたが,ふと我に返り,鈴木君を追いかけました。

廊下で鈴木君を見つけた時は,隣の学級で授業をしていた学年主任の山本先生が鈴木君に後ろからしがみつき,落ち着かせているところでした。鈴木君は目がつり上がり険しい表情をしていました。話し方も荒々しく,ふだん見る姿とは全く違い,まるで別人のようでした。佐藤先生は驚きました。

「いったい鈴木はどうなってしまったんだ…。」
勉強や運動神経が特別にすばらしい生徒ではありませんでしたが,普通のよい子であった鈴木君からはとても想像ができないその様子に,佐藤先生は呆然としていました。

2 学年での話し合い

その日の放課後,鈴木君のことで養護教諭を含めて,臨時に学年会が開かれました。まず,佐藤先生から,今日の数学の時間での出来事が話されました。その後,学年主任の山本先生が次のような話をしました。


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