福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -015/036page
動と授業や学級の指導を混同してるとか…,そのことで,3年生の部員同士の関係も悪くなっているようで…。」
佐藤先生は,びっくりしました。自分は親しみを込めて生徒たちと接し,生徒も自分についてきていると思っていたし,大会でもそれなりの成績をおさめていて,指導には自信を持っていたからです。
「いつも真面目に頑張る姿。キャプテンとして部をまとめようと友達との間で悩む姿。キャプテン失格と言われ豹変してしまった姿。」
いくつもの鈴木君の姿が浮かび,佐藤先生の頭の中で一つに結びついていきました。
「鈴木君の爆発は,自分の指導と…」
佐藤先生の思いは確信となり,そして,不安となってどんどん大きくなっていきました。4 母親との懇談
前日電話で話をしていた佐藤先生は,翌日の放課後学年主任と共に,鈴木君,そして母親と一緒に話し合いの場を持ちました。
重苦しい雰囲気の中での話し合いとなりました。佐藤先生は,鈴木君の学校での出来事を詳しく話しました。「何でうちの子が突然そんなことを……,やさしいいい子だったのに…。」
母親がつぶやくと,沈黙が続きました。佐藤先生は,今の自分の思いを,勇気を持って心に訴えるように鈴木君に話し出しました。
佐藤先生 ;先生,今回のことについて考えたんだ。いつも真面目な君がどうしてって…。 鈴木君 ;……。 佐藤先生 ;最近,部活動のことで友達とトラブルがあったんだよね。キャプテンとして苦労してたのも知らないで,授業に部活動のことを持ち出して心ない言葉を言ってしまって…,すまなかった。 鈴木君 ;…先生。 佐藤先生と涙声で話し出した子供を見つめながら,母親は,「子供に何もしてあげていなかった自分」を感じていました。そして,思い出したことを話し始めました。
「思い返すと,ここ1週間ぐらい元気がなかったように思います。2,3日前は,部活動のことで困っていると言われたのに,キャプテンなんだからしっかりしなさい,と話を聞いてあげませんでした…。」ここでの話し合いは,子供のためにと仕事に打ち込んできた母親にとって,親子関係を振り返る機会となりました。
そして佐藤先生にとっても,家庭でも心を受け止めてもらえず,一人苦しんでいた鈴木君のことがわかり,生徒のおかれている状況を深く考えさせられた時となりました。5 新たな取り組み
佐藤先生は,鈴木君の今回の出来事は,「生徒一人一人を見つめ理解しようとせず,教師側の思いだけで指導してきた結果だ」と振り返りました。そして,生徒を緊張させ,きちんとさせること以前に,安心感を持たせ,自分の心を表現できるようにしていかなくてはと考えました。
まず佐藤先生は,部活動では悪いところを指摘するばかりになっているのを,「よさ」や「頑張り」を見つけることに努め,積極的に声