福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -016/036page
をかけていくことにしました。
「今のプレーいいよ。気合いが入ってきたぞ」
「惜しい惜しい,ねらいはよかったぞ」そして,上手な部員中心になりがちだった練習試合では,努力している部員にもできるだけ活躍の場を与えようと,どんどん参加させていきました。
また,部活動ばかりでなく授業でも,一方的に指導するのでなく,多少時間がかかっても,生徒が自ら考え理解していけるよう,進め方を工夫していきました。
6 伸びやかな生徒の姿
野球部もいよいよ大会を迎えました。
あいさつが交わされ,試合が始まりました。
試合は,追いつ追われつの緊迫した試合となりましたが,苦しい状況ではキャプテンの鈴木君が声を出し,みんなで声をかけ合ってふんばっていきました。これまでの試合とはまったく雰囲気が違っていました。苦しい試合ながらも伸び伸びとしたプレーは,「自分たちの力で何とか乗り越えていくだろう」と思わせるものでした。試合終了後,グランドには勝利の喜びにわく生徒の姿がありました。佐藤先生は,その生徒の姿を見つめながら,「この生徒のためにもっともっと変わっていこう。そのためにも,学級でも部活動でも,もっともっと生徒を見つめ,生徒と共に喜び合えるよう努力していこう」そう強く思っていました。
《中学生の心に気付くために》
中学校の生活の中で,「普通の生徒」が学校,家庭,仲間との関係の中でストレスを溜め込み,些細なことから問題を起こすことが増えてきています。鈴木君は,友達や担任,家庭との関係に亀裂が生じて悩んでいましたが,真面目な「普通の生徒」として,教師からはほとんど関心を向けられない"透明な存在"という状況に問題が表出しました。
○ 「普通の生徒」はいるのでしょうか。
「普通の生徒」といった曖昧な見方をなくし,一人一人と向かい合い「個性を尊重」していく必要があります。佐藤先生も自分の指導を振り返り,鈴木君や他の生徒のよさや頑張っているところを大切にして,一歩を踏み出しました。○ 「周囲との関係」にどうでしょうか。
鈴木君のように,生徒は周囲との関係の中で,緊張やストレスを溜め込んで孤独な気持ちで生活することも多く,その関係の裂け目に問題行動は多く起こっています。教師は,そうした生徒の状況を十分に認識し,生徒同士が互いに認め合う居場所のある関係をつくり,「安心感」を持って「伸びやか」に生活できるようにしていきたいものです。○ 「心のサイン」を出していませんか。
鈴木君のような普通の生徒が問題を起こすには,その生徒なりの理由があり,気を付けて見ていれば何らかの前兆があるといえます。生徒を見つめ心のサインを見逃さないよう注意すると共に,生徒の気持ちをくんだ応答を心がけたいものです。生徒は「何気ない行動」に敏感です。生徒に様々な変容があったにしても,教師が生徒に心を開き,かかわりを振り返りアプローチを工夫していけば,一歩進んだ理解や改善が図られることになるのではないでしょうか。