福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -017/036page

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研究紹介
 
  小学校理科
SPDによる概念検証型の授業づくり
〜第4学年理科「電気の通り方」の実践を通して〜
 
教育センター 長期研究員  佐 藤  陽一

1 はじめに

電流に関して,第4学年「電気のはたらき」の単元では,電気が乾電池の+極から−極に一方的に流れるという循環的な見方を学習している。しかし,この学習後6ケ月を経てから調査してみると,実に6割の児童が,+極と−極から流れ出る電気がぶっかるという衝突的な見方や,電気が使われてなくなるという消費的な見方に変わってしまっていることが分かった。

これは,電池のつなぎ方を変えてモーターにつなぐとどうなるかという学習はされていても,電気はどう流れるかという基本的な学習がされていなかったためであると考えられる。

このように,個々の事象としての理解は図られても,それらの事象がどのような意味を持っていて,どのように結びついているのかという概念としての理解が図られていなければ,個々の事象に対する理解さえも,しだいに失われていくのではないかと考えた。

そこで,「電流はどのように流れているか」といった概念としての理解に目を向けていき,児童の持つ「電気がぶつかってモーターが回る」などのような素朴な概念を演繹的な方法によって検証する活動を展開し,事象どうしを結びつけている概念に対しての検討を行っていく必要があると考えた。

本研究では,概念としての理解を図るために,児童の持つ素朴な概念をもとに,それらを検証するような授業展開を意図し,それを実現するために,事前の評価を重視したS(評価)→P(計画)→D(実践)による授業づくりに取り組み実践した。

2 評価と授業づくりの考え方

(1) 従来の評価

一般的な授業づくりでは,初めに計画(Plan)を立て,次に実践(Do)し,最後に評価(See)する,いわゆるPDSによる授業が行われていた。この評価について少し考えてみると,これは学習内容がどれだけ身についたか,あるいは,どれだけ変容したかということをとらえようとする評価,いわゆる「振り返り型の評価」であったと言うことができる。

しかし,授業後に「子供たちは学習内容をよく理解していなかった」ということが分かったとしても,終わってしまった授業を変えることはできない。

(2) 「予見型の評価」と授業づくりの提案

そこで,ここで提案するのは,事前の評価,児童の思考の流れを予め予見しておくために行う評価,つまり「予見型の評価」である。

従来の事前調査は,学習する内容が決まっていて,それに比べてどこまで到達しているかを


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