福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.133(H13/2001.7) -029/036page
研究紹介 人間としての生き方について自覚を深めさせる道徳の指導
〜視聴覚教材を用いた授業展開の工夫を通して〜 会津若松市立第四中学校 教諭 加 藤 孝 之T 主題設定の理由
子供たちを取り巻く環境が急速に変化し,私たちの予想を越えて様々な様相を見せている。 メディアによる情報の氾濫も更に混乱を招く一因となっていると思われる。
そうした中,本校では「豊かな体験を通して,道徳的価値および人間としての生き方についての自覚を深めながら,他人を思いやり,場に応じた言動のできる生徒を育てる」ことを重点目標として掲げ,道徳・特別活動との関連を図りながら教育活動を展開している。生徒の実態として,@基本的マナーが身についていない,A言われたことはまじめに取り組むが主体性に乏しい,B意欲を持続できない,C向上心に乏しいことなどがあげられる。
これらの問題を解決するために,学級においては「道徳の時間の充実」を心掛け実践している。教師の話や資料の内容を真剣に受け止めない傾向が強く感じられ,普段の道徳の授業の悩みでもある。その原因として,「自分のこととして考えられない」,「自分が直面しなければ関係ない」といった意識が強いことが考えられる。道徳の授業に対する意識調査を実施したところ,結果は予想したより道徳の授業に対する関心は高かったが,資料に感動したり,自分の生き方の問題として授業で学んだことを受け止めて実践したりする生徒は少ない傾向にあった。
☆ 意 識 調 査 ☆Q1.あなたは,道徳の授業が好きですか。 [好き(4人),まあまあ(17人),嫌い(8人)] (好きな理由) ・色々な話を知ることができる。(17人) ・自分が感じたりしたことを発表できる。(4人) (嫌いな理由) ・つまらない。(6人) ・自分の経験じゃないから,意味がない(2人) Q2.授業の中で,主人公の立場に立って考えたりしますか。 [いつも(2人),時々(19人),しない(8人)] ・内容が自分に身近であったりすると考える(9人) ・自分だったらどうするか考える(2人) ・主人公の気持ちを理解するため(10人) Q3.資料を読んで,感動したりすることはありますか。 [ある(9人),ない(19人)] Q4.毎日の生活の中で,道徳の授業で学んだことを実践していることはありますか。 [ある(3人),ない(26人)] ・友達と話をする時,無意識のうちに相手を傷つけていないか注意している。(1人) ・相手の立場を考えて行動している。(2人) そこで,本学級における道徳の課題は,素直に感動できる心を耕し,自分の生き方について深く考えられる生徒を育成することと考えた。
その具体的な手立てとして,生徒に感動をもたらす資料を開発し,視聴覚教材を用いた授業展開を工夫することとして,本主題を設定した。
U 研究仮説
1 仮説
視聴覚教材を用いた授業展開を工夫し,生徒の心に訴えれば,自分のこととして真剣に考え,人間としての生き方についての自覚を深めさせることができるであろう。