福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.134(H13/2001.11)-016/036page

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連載コーナー
「自ら学び自ら考える力」を育成する授業の実際

[高等学校芸術科音楽]
日本の伝統音楽に親しませる指導の工夫
〜和楽器「箏」の魅力を生かして〜

 
教育センター学習指導部

T はじめに

世界の諸民族がそれぞれの音楽文化をもっているように,日本にも長い歴史を経て育まれてきた伝統音楽がある。しかし,生徒にとっては接する機会が少ないのが現状である。これからの国際社会で生きていく生徒にとっては,世界の様々な音楽文化を広く受容すると同時に,自国の音楽文化の価値やよさを感じ取り,より幅広い音楽観と感性を培うことが必要であると考える。新学習指導要領でも,「我が国や諸外国の音楽文化にっいての関心や理解を一層深める表現活動及び鑑賞活動の充実を図る」ことが重視されている。そこで,授業を通して,生徒が学ぶ楽しさを味わいながら日本の伝統音楽の魅力に触れる機会を作りたいと考え,次のような指導の工夫をした。

 

U 題材の設定

日本の風土の中で育まれてきた音の魅力を,生徒にじかに感じ取らせたいと考え,和楽器「箏」を題材にした授業を計画した。和楽器には,他にも三味線・尺八・篠笛・和太鼓などいろいろあるが,「箏」は,比較的容易に演奏を楽しむことができ,必要に応じて音程を調整したり,奏法の工夫によっては,様々な音色や余韻の変化などを作ったりすることができるという長所をもつ。生徒にこれらの長所を実感させ, 繊細で美しい音色を味わわせたいと考えた。
そして,「箏」の魅力を生かした指導計画を作成し,以下のように実践した。

 

V 授業の実際と指導の工夫

(1) 導入での工夫1・箏に触れさせ,その構造を理解させるとともに,音色の美しさを感じ取らせる。

授業の最初に,必要な音だけが順番に並ぶようにあらかじめ調弦しておいた箏を二面準備し,「春の海」の出だしの4小節を爪をつけずに指1本で弾かせ,2人で演奏させた。旋律は,リコーダーで教師が演奏した。生徒は,箏が思ったより容易に演奏でき,日本的な美しい音色をもった楽器であることを感じ取ることができた。

(2) 導入での工夫2・平易なわらべうたなどで箏の奏法に慣れさせるとともに,曲を弾く楽しさを味わわせる。

4つの音でわらべうたを弾いている場面
《4つの音でわらべうたを弾いている場面》

箏の基礎的な知識について学習した後,2〜3名につき一面の箏を準備した。基本的な奏法については,なるべく短時間で済ませ,生徒に曲を弾く喜びを味わわせたいと考えた。まず,


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