福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.134(H13/2001.11)-020/036page

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3 貴重な情報

森田先生は,洋子さんのことが気にかかり,早めに家庭と連絡を取った方がよいと考えました。突然訪ねては失礼だと思いつつも,パート勤めの母親が帰るころを見計らって洋子さんの家に寄ってみました。

家には,母親がいました。母親に“あざ”のことを話すと,さして驚いた様子でもなく,淡々と聞いていましたが,森田先生の話をさえぎるように言いました。
「特に心当たりはありませんが,たぶん心配ないと思います。今忙しいのですみません。」
森田先生は,やむなく挨拶をし家から離れましたが,母親の無愛想な言葉が気になりました。「突然来たので,機嫌が悪かったのかしら。それにしても変ね。」
そう思いながら,来た道を戻り始めました。

帰りがけ,公園に入る道路の手前で,洋子さんの隣に住む明美さんの母親に会い,挨拶を交わしました。すると,明美さんの母親は表情をくもらせて話し始めました。
「先生,隣に住んでいる洋子さんのことなのですけれども。こんな話をしていいのかどうか。」
「どうしたのですか。」
「よくお母さんの怒鳴り声が聞こえてくるのです。叱っているというよりも,洋子さんに当たり散らしているようで……。私たちも怖くなってしまうほどの声なのです。」
「えっ,そんなことがあるのですか。」
「それに,『ごめんなさい。』という洋子さんの声が聞こえてくることもあるのです。洋子さんに何か起きなければいいなと,家で話しているのです。」
「それで何かほかにご存じでしょうか。」
「お父さんは仕事が忙しくて夜遅く帰ってくるようです。お父さんの声は滅多に聞こえません。お母さんの怒鳴り声が聞こえてくるのは,お父さんがいないときのようです。」
「………。教えてくださってありがとうございます。」

森田先生は,どうしたらいいものか思案にくれていました。

4 洋子さんの心

翌日,森田先生は家庭訪問の状況を教頭先生に伝えました。緊急に生徒指導部会を開くことになり,校長先生,教頭先生も出席のもと今後の対応について話し合いました。

まず森田先生からこれまでの経緯が話されました。その話の後,校長先生から担任一人で対応するのではなく,学校の組織として森田先生を支えていきたい旨の話がありました。
話し合いでは,さらに情報を集めること,両親から話を聴くこと,洋子さんの様子を注意して見ていくこと等が確認されました。
森田先生は,改めて洋子さんと話をしてみようと思いました。

ちょうど昼休み,花壇の近くで独りぼっちでいる洋子さんを見つけました。よい機会だと思った森田先生は,近寄って洋子さんの好きな犬の話などをしました。それから,家庭のことを聴いてみました。

森田先生
洋子さんのお父さんは忙しいの。
洋子さん
うん。毎日帰ってくるのが遅い。お休みも出かけてしまう………。
森田先生
そうなの。じゃあ,さびしいわね。お母


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