福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.134(H13/2001.11)-022/036page

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育てを母親に任せきりにしていたことを反省していました。また,洋子さんがこれほどの苦しさを父親の自分に話してくれなかったことにもショックを受けていました。
父親は今後母親の話をできるだけ聴くようにしたいと話されました。また,母親が子育てへの不安を抱え誰かに相談したいと話していることから,母親の話を聴いてくれるような場がないか尋ねられました。そこで,市の相談機関を紹介しました。
父親は森田先生と教頭先生に感謝の言葉を残して帰っていきました。

6 洋子さんの笑顔

2学期も残りが1ケ月となったころ,教室に一人残っていた洋子さんがもじもじしながら,何かを話したそうな素振りであることに気が付きました。
森田先生は,近くに座って声をかけました。

森田先生
洋子さん,このごろとても元気が出てきたようだね。
洋子さん
あのね,最近,お母さん,私のことほめてくれるようになったの。
森田先生
そう,よかったわね。
洋子さん
お母さんね,先生が連絡帳に私のよいところを書いてくれたよ,と言って喜んで読んでくれるの。先生,ありがとう。

その時,洋子さんの顔には“心からの笑顔”がありました。その笑顔を見て,森田先生もとてもうれしい気持ちになりました。
森田先生は,教師としてまだまだ力不足を感じています。しかし,目の前の子供が"自分に力をつけてくれる教科書"なのだと洋子さんとの関わりを通して思うようになってきました。

《小学生の心に気付くために》

小学生は,体力的にも精神的にもまだまだ弱い立場にあり,自分で働きかけて解決する力も十分には育っていません。そこで,周りの大人の“気付き”が大切になってきます。特に子供の身近にいる私たち教師は,常に子供が発しているメッセージを受け止める存在でなければなりません。そのため,次のことを考えていきたいものです。

○「小さな変化」をとらえていますか。
森田先生は、発育測定で洋子さんの“あざ”に気付きました。その「小さな変化」を見過ごすことなく対応したことから,状況がよい方向へ変わりました。変化は身体的なものばかりでなく,言動面にも表れます。その「小さな変化」に気付く心を磨いていきたいものです。

○「言動の背景」をつかんでいますか。
洋子さんの“表情の暗さ”の陰には、家庭での母親によるしつけの行き過ぎた行為がありました。子供は,家庭の状況や友人との関係など「様々な背景」を抱えて学校に来ています。言動の背後にある情報を多角的に集め理解していくことが大切になります。

○「日ごろの連携」が図られていますか。
森田先生は、この出来事の後、保護者とできるだけ会話を交わすことを心がけるようになりました。日ごろからつながりを持つことがいかに大切なことであるかということに気付かされたのでした。このように,子供をよい方向に導くためには協力体制が欠かせません。校内の先生方,そして地域の方や関係機関とも日ごろの関係づくりを積極的に行っていきたいものです。


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