福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.135(H14/2002.2)-023/036page
研究紹介 進んで計算に関わり,数の見方を豊かにする子どもを育てる授業
〜表現力の育成を通して〜 いわき市立泉小学校 教諭 児 玉 健 治T 主題設定の理由
5学年の算数科の学習指導にあたって,これまでの授業の反省や38名の児童の実態をよく把握し,改善点や育てたい力を明確にして実践研究にあたりたいと考えた。
1 学力診断テスト・諸調査の結果から
年度当初の学力診断テストの結果から,次のような児童の実態が明らかになった。
・「数と計算」領域が全国比より劣る。
・「整数のかけ算やわり算」で全国比より低下が目立つ。
・小数や分数の計算での通過率が低い。これらの原因を探るために,式や数の見方に関する調査を実施した。これは「以下の3問を工夫して計算しなさい。」というものである。
・200×300
・900÷300
・25×3
結果を見ると,きちんと筆算をして答えを求めたという児童が約70%に達した。これらの3問は,筆算をしなくても100のまとまりを意識すれば答えが出せるものである。しかし,児童の多くは,計算方法を工夫することなく筆算による計算をして答えを出していた。この3問だけでは多くのことは断定できないが,数の大きさをイメージできないまま計算をしていることが分かった。機械的な計算手順にとらわれ,よりよく数理的な処理をしていこうとする態度や思考力が身に付いていないのではないかと考えた。また,児童の「算数学習に対する意識」を探るためにアンケート調査を行った。【資料6】このアンケートの結果から,算数を難しいと感じている児童のほとんどは自力解決をしていくための手段がよく身に付いていないこと,解決の手段を見付けられないでいるということが分かった。前述の検査結果と比べてみても,既習事項の理解と定着が不十分であることは明らかである。このことが学習意欲を減退させ,自信を失わせているように思われた。
2 自らの算数指導を振り返って
算数科の授業においては,これまで数学的な考え方の育成を重視し,図や数直線などによる表現力の育成に力を入れて実践を継続してきた。学習の過程で表現力が身に付くということは,思考力や判断力の育成につながると考えるからである。また,解決の見通しを持つ段階においては,既習事項に立ち返る手段として,前学年までに使用した教科書を教室に常備し,自力解決の際の手がかりとさせてきた。しかし,現在の学級の児童の実態を考慮すると,さらに,一人一人に既習内容・方法を想起させる支援の工夫や答えを予想したり見積もったりする場の設定など,一層積極的な働きかけによって学習の見通しを持たせる必要があると考えた。
実践を進めるにあたっては,児童のレディネスを高めるとともに,「数と計算」の領域においては意味理解と方法理解を伴った計算力の育