福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-018/036page
囲との関係が大きく影響していることに気付きました。そして、このことを他の先生方にも知らせ、共通理解を図ってもらいました。
(5 日ごろからのかかわりについても、共通理解を図った)
2ケ月後のお母さんとの話し合いでは、行動のメモをもとに、先生方で基本的なかかわりについて共通理解を図っていることや同じ歩調で対応できるよう協力を求めていることを話し、家庭においても周囲の支えが大切であることを確認し合いました。また、薬の服用については、次回医者へ行く機会に、今回学校と家庭で書き出したメモを情報として提供し、判断を仰ぎ、今後の対応についても助言していただくようお願いをしました。
(6 家庭と連絡帳で情報交換をした)
小さい頃から、しかられることが多かった裕太君でしたが、毎日の連絡帳を通して学校でのがんばりを家庭に伝えてもらえるので、家庭でもほめてもらえる機会が多くなっていきました。また、家庭でできることを家族が考え、実行してくれている様子を知ることができ、学校でもほめてあげる機会が持てました。そのためか少しずつ情緒面での落ち着きが増し、大きな声を出したり、すぐ手を出したりする行動も減り、級友と仲良く勉強したり、遊んだりする裕太君の姿が見られるようになりました。連絡帳が、お互いの情報交換ばかりでなく、本人の成長と自立の足跡にもなっていくことを小林先生もお母さんも徐々に実感しています。
☆終わりに
今回は、すでに「ADHD」であると診断され.家庭の協力が得られた事例でしたが、「ADHD」と診断されたことで、「病気なのだからしかたない」とあきらめられている場合もあるという話を聞くことがあります。また、診断されない場合では、本人に「問題の子」とレッテルを貼ったり、学校と家庭とでお互いを責め合ったりするだけで、適切な対応がなされていないケースもあるようです。
「ADHD」に限らず、どんな子の問題行動であろうと、今回小林先生が行ったように、学校と家庭が連携し、その子をどのように理解し、一緒にどうかかわっていくかを考えていくことが大切です。子供を思う親の気持ちを大切にして、学校は家庭の、家庭は学校の労をねぎらい、本人のために何をしてあげられるかを一緒に考えていくことが、問題の解決と子供の成長につながっていきます。
どんな子も特別視することなく、一人一人に誠実にかかわり、子供との信頼関係をつくっていくことができる担任は、子供同士が支え合い、みんなが成長し合える学級をつくっていけるのではないかと思います。「一人一人はみなかけがえのない子」というかかわりの基本姿勢こそ、問題改善の近道ではないでしょうか。
◇参考文献 「こうすればうまくいく ADHDをもつ子の学校生活」 リンダーフィフナー「ADHD子どもが輝く親と教師の接し方」 司馬理英子 発行主婦の友社「学校教育相談ハンドブック」 福島県教育センター