福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.137(H14/2002.11)-017/036page
【小林先生の実践】
小林先生は、家庭と連携し、早期に対応していくことが裕太君のためでもあると考え、日ごろの裕太君の様子を正直に伝えることにしました。そしてそれに対してどのように対処しているか、また、今後家庭と協力しながら進めていきたいと思っている取り組みについて具体的に話しました。まず、その取り組みに対し、小林先生は学校生活の中で、お母さんは家庭生活の中で実行しお互いそれぞれ裕太君の行動を記録し情報を交換し合うこと、そして2ケ月後に時間を取って相談することを決め、その日は話を終えました。
(1 子供の問題となる行動を明確にした)
早速、次の日の放課後、小林先生は、メモ用紙に朝からの裕太君の気になる行動についてできるだけ具体的に書き出してみました。
(2 行動の直前で誘発している要因を探し、取り除くようにした)
まず、いくつかの問題行動の中から、今一番困っている行動について考えていきました。その行動というのは、「授業中集中できない」ということでした。その行動を誘発しているものが、周囲の環境に影響されていないか考えてみました。すると、教室が静かだと比較的落ち着いているのに、いろいろな音が増えてくるに伴い、だんだん落ち着きをなくしていくことに気が付きました。「ADHD」の子供は、たくさんの音の中からどれを聞き分けていいか混乱してしまうということが言われます。小林先生は、できるだけ静かな教室環境づくりに努めたり、裕太君にとって今大事なことを簡単に分かりやすく伝える工夫をしたりしながら学習を進めてやらなければならないことに気が付きました。
(3 問題行動の直後の要因について考え、その結果を変えられないか検討した)
言葉による長い指示はできるだけ短くしたり、掲示物を使って視覚的に訴えたり、一回の指示は一つだけに絞ったりと明確な指示の与え方にしていきました。さらに確実に理解させたい内容については、復唱をさせてから行わせるようにしました。次に、授業中集中できないときに何をしているか考えてみました。教師の気を引こうとして大声を出したり、友達にちょっかいを出したりして授業に参加していない様子が浮かびました。
そこで、何とか授業に参加することはできないか知恵を絞ってみました。
(4 問題行動の様子をチェックし、記録を取り、それをもとに周囲の理解を図った)
小林先生は、提示物や教材があるときは、裕太君に一緒に持ってもらったり、モデルを示すときはモデリングをしてもらったりと、活躍できる場を設ける工夫をしていきました。全部の授業での工夫は大変ですが、可能な限り場と機会を見つけ、計画的に行えるようにしました。実際に試してみると、裕太君は大変やる気を出し、得意になって授業に参加するようになりました。このようにして、小林先生は他の問題行動についても、行動を誘発しているものや繰り返しているもの、行動の前後についてや周囲の様子について等、一つの問題行動ごとに記録をとるノートを作っていきました。そして、1ぺージに一つずつ、問題行動についての効果的なかかわりと効果的でなかったかかわりの両方について書き出してみました。書き出していくうちに、裕太君の行動が突然起こるのではないことや周