福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.138(H15/2003.2)-032/036page

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―授業に生きる資料―
 
教科教育チーム


球技における指導と評価の工夫

攻防が入り乱れる球技の授業でゲームは好まれますが、なかなかその種目らしくなりません。バスケットボールがラグビーのようになってしまうのですが……。

 

どうして?

10人でバスケットボールのゲームをしているとき、ボールを持っているのは1人です。ゲーム中の大半はボールを持たずに動いています。けれども、練習課題のほとんどはボール操作です。つまり、ボールを持ってからの動きだけを練習して、ボールをもらうための動きやチームとしての動きを練習できないまま、ゲームを行うことがあります。練習の成果を発揮しようとするほど密集状態になるわけです。

どうしたら?

このような問題を解決するために、ゲームを構成している要素をもっと幅広く捉え、ボール操作と並行してそれ以外に必要とされる能力を伸ばすような取り組みを工夫しましょう。

では、ボール操作以外のゲームを構成している要素をどう捉えるかについてですが、今回はアメリカで開発されたゲームパフォーマンス評価法(Game Performance Assessment Instrument 以下GPAI)を参考にしてみました。GPAIではゲームを構成している要素を7つのカテゴリーに分け(右表)、ゲーム中のプレイヤーの行動そのものを分析することを可能にしています。その中には、ボールを持たないときの動きも分析の対象として含まれています。また、7つの構成要素を一度にすべて分析することはかなり複雑になってしまうので、いくつかの要素を選択して観察分析することもできます。

このようにすると、小学生でも利用できます。
例えば、「サポート」に注目してみます。これはボールを持たないときの動きのひとつです。味方がボールを保持しているときにパスをもらえる位置に移動したかどうかを評価します。そのとき、実際にパスが成立したか否かは問われません。パスの成否は「技能発揮」に関わる別の評価要素として扱われます。このように、今までは評価の対象になりにくかったボール操作以外の要素を評価しようとすることがGPAIの特徴です。

構成要素に着目した授業

このゲームを構成している要素を課題とした授業を展開することもできます。ここでは、「サポート」を中心課題とした授業を構想してみます。

[ゲームパフォーマンスの構成要素]
カテゴリー
内容
1 ベース ある技能を発揮し、次の技能を発揮するまでの間のホームポジション、あるいはリカバリーポジションヘの適切な戻り。
2 調整 ゲームの流れに応じた、オフェンスあるいはディフェンスポジション調整の動き。
3 意志決定 ゲーム中にボール(シャトル等のボールに相当するもの)などを操作して何を行うべきかに関する適切な選択。
4 技能発揮 選択した技術の有効な実行。
5 サポート 味方チームがボールを保持している場面で、パスを受けるポジションヘ移動するボールを持たないときの動き。
6 カバー ボールを保持している味方プレイヤーやボールに向かって移動している味方プレイヤーに対するディフェンス面での支援。
7 ガード/マーク ボールを保持している相手プレイヤー、もしくはボールに向かって移動している相手プレイヤーに対するディフェンス。


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