福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -022/036page
3 検証授業の実際と考察
(1) 授業の概要
【検証授業 1】
大多数の生徒は回路イ、ウは豆電球がつかないと予想していたが、2名だけがつく(○と△)と予想した。理由も当を得たものだったが、それによって予想を修正する生徒はいなかった。
その後の実験は飛びつくような勢いで活動が始まり、ほどなく「え〜、なんでつくの?」という声があちこちから聞かれ、認知的葛藤が生じていることが伺えた。何回もやり直して確かめるグループも多く見られた。実験結果を考察する段階では、電池の向きと+、-の符号を対比させて数式を用いて説明する生徒が数名見られた。また、自分の考えを適切に表現する言葉が見つからずに悩む生徒が多く見られたので、対話する形で援助した。実験から考察の段階に至るまで、グループ内討議かいつもより活発に行われていた。構成主義学習論の重要な概念である「ことば」と「コミュニケーション」により、概念の再構成が活発に行われていたと見ることができた。
まとめの段階で「綱引き」のたとえ話をしたが、それが効果的だったことが生徒の感想から読みとれた。[授業の満足度=4.0(5段階評価の平均値)]
【検証授業 2】
パチンコ玉は電子を表しているというところまではほとんどの生徒が自力で到達していたが、電圧や電流が何に相当するかはなかなか気づくことができない様子だった。そこで、導線の中にある電子は何もしなければ動かないこと、電子を動かす(すなわち電流を流す)ためには力が必要であることを問答形式で確認し、台の傾きが電子を動かすもと、すなわち電圧を表していることに導いた。また、水流モデルと対比させることでヒントとしたが、水流モデルの理解が不満足な場合が多く、あまり効果的ではなかった。電流については、パチンコ玉の速さあるいは流れという認識に到達したのは半数弱で、残りはパチンコ玉そのものが電流という表現にとどまっていた。
抵抗については、釘で表されるという生徒がほとんどで、釘の数というところまでは到達しなかった。電流にしても抵抗にしても、パチンコ玉や釘の「数」という考えに至らなかったのは、教師の説明に「電流の大きさ」「抵抗の大きさ」という表現がなかったことが大きな要因ではないかと反省させられた。[授業の満足度=3.7(5段階評価の平均値)]
(2) 考察
研究単元の学習後に、学習前と全く同じ調査問題(図1)にて生徒の実態調査を行った。
図2は、学習の前後における設問ごとの正答率の変容を示したものである。また、図3は、設問2〜4の解答状況を分析した結果で、学習前後の生徒の「電流モデル」の変容を示したものである。
@ 正しい「電流モデル」の獲得
設問2、4、5、10の正答率向上から電流保存・電流分岐概念の向上が、設問3、6、7の正答率向上から電流の向きの正しい認識と電流衝突説の克服、設問8の正答率向上から電子消費説の克服がそれぞれ認められたといえる。
また、学習前には一人もいなかった正しい「電流モデル」(表2及び図3の1)の保持者が4割を超えた。この生徒達は他の設問での正答率も高い傾向が認められた。設問ごとの条件設定に惑わされずに「一貫した考え」を適用したものと思われる。A 電流・電圧概念の広がり
イメージマップの変容を見ると、学習前に比べてイメージマップに使用した用語の数、用語