福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.139(H15/2003.7) -023/036page

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電流理解の変容
図2 電流理解の変容

電流モデル」の変容
図3 「電流モデル」の変容

表3 用語からのリンク数と未使用者数の変容
「電流」からの
リンク数(平均)
「電流」
未使用者数
「電流」からの
リンク数

「電流」
未使用者数

学習前

2.9

1
1.8
3
学習後
3.7
0
3.3

0

イメージマップの変容の例
図4 イメージマップの変容の例
学習前(左)は未使用の用語が多く、「電圧」と「電流」が離れた位置にあるなど、概念が未熟であることが読み取れる。それが学習後には、すべての用語が使われているとともに、「電流」「電圧」「抵抗」の3つが緊密に関係していて、その関係を「オームの法則」としていることが読みとれる。(この生徒は、学習前は調査問題に全問不正解だったが、学習後には全問正解に至った。)

どうしをつなぐリンクの数共に明らかに増えていた。その中で「電流」と「電圧」について、それらから出ているリンクの数(一人あたりの平均値)と、それらの用語を使わなかった生徒数を示したものが表3である。

「電流」「電圧」以外の用語も含めて学習後のイメージマップは明らかに構造化されており、生徒の電流・電圧概念が豊かに広がったことが認められた(図4の参照)。

生徒の獲得した概念は、「正しいリンク=合理的な関連付けによる構造化」と「一貫した考え」により「科学的」であるということができると考える。それに照らせば、約半数近くの生徒が「科学的な電流・電圧概念」を獲得したということができる。絶対評価的に見れば満足のいく数値ではないが、学習前との比較からある程度の成果はあったものと思われる。

 

X 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ

○ 認知的葛藤を生起させるような課題の提示とその後の指導過程の工夫、及びモデルを用いた考察によって、正しい「電流モデル」と合理的な関連づけによる構造化がなされた電流・電圧概念を獲得させることができた。

2 今後の課題

(1) 構成主義学習論からの指導法の改善
(2) 他の単元における「状況依存的」な考え方をする生徒の実態の把握と指導法の改善
(3) 理解の定着・深化あるいはつまずきの解消を図る指導の強化

【参考文献】
1 門馬徳夫、吉田俊博:福島大学教育実践紀要第41号(2001)、42号(2002)
2 長洲南海男、武田一美:「中学校理科のつまずきとその指導」(第1分野)、東京書籍(1981)
3 後田 浩:教育研究法講座研究報告書(平成12年度)、福島県教育センター(2001)
4 日本理科教育学会編集:「理科の学習論(下)」、理科教育学講座第5巻、東洋館出版社(1992)
5 左巻健男編著:「実践資料12か月 中学理科の授業・2年」、民衆社(1986)


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