理科学習指導資料高等学校「理科2」の指導-126/139page
4 光合成における二つの反応系
光合成に必要な材料や,その反応生成物は,これまでの研究で次第に明らかにされてきた。20世紀に入ると,光合成反応の内部のメカニズムと関係してくる環境諸要因の問題がとり上げられてきた。ブラックマンは,光合成には,光の強さに規制される明反応と,CO2 濃度に規制される暗反応とがあることを明らかにした。これ以来,光合成の研究は,明反応・暗反応の二つの分野で進められ,酸素や炭素の同位体をトレーサーとしての実験が登場してくる。
ブラックマンの研究―限定要因説―(1905)
光合成の速度と CO2 濃度,光の強さ,温度などの条件変化との関係をこまかく測定した。
(1)光合成と光の強さ (2)光合成と温度 (3)光合成とCO2濃度 温度・CO2濃度一定 CO2濃度一定 温度一定 (1)光合成と光の強さ (2)光合成と温度 (3)光合成とCO2濃度 (A)限定要因は光→光の強さに比例して光合成量が増す。 (A)限定要因は温度→温度の影響があらわれる。 (A)光は十分→限定要因はCO2濃 度 (B)限定要因は光以外(たとえば温度)→光を強くしても光合成量は一定。 (B)限定要因は光→温度の影響はあらわれない。 (B)光が不足→限定要因は光→したがってCO2濃度の影響はあらわ れない。 実験結果から
光合成の反応は,単なる化学反応の連続ではなく,光を必要とする過程と,光を必要としない過程があり,光が十分に与えられている時は, CO2 濃度が光合成の速度をきめ,逆に CO2 濃度が十分に与えられている時は,光の強さが光合成速度をきめる要因となっていることを明らかにした。また, CO2 が要因となっている時には,光合成速度は温度にも影響を受けるが,光が要因になっている時は,光合成速度は温度に影響されなかった。
光合成は,それに影響を及ぼす諸要因のうちで,最も限定的な要因によって,光合成量が左右されるとした。この考え方が「限定要因説」とよばれ,光合成の二つの反応系(明反応と暗反応)の存在を示すものであった。
環境条件 一定にする条件 関係事項 光の強さ CO2濃度を十分
温度を一定光飽和点までは光の強さを増すごとに,光合成速度も増加するがそ れ以上は増加しない。 CO2濃度 光は十分
温度を一定CO2濃度に比例して光合成は盛んになるがそれをこすと光合成速 度は増加しない。 温度 CO2濃度を十分 強光の場合:温度上昇と共に光合成速度増加(30℃付近まで) 弱光の場合:温度変化にほとんど無関係