北会津村誌 -044/534pag
ないからである。このために鶴沼川を支流とする大川の氾濫ほ大きく、宮古量水標は9月1日午前5時最高4.2メートルに達した。カスリン、アイオンと三年連続の台風洪水で、前年度までの破損箇所の修理の充分でなかった9ヵ所ほどに、護岸、護岸水制などの被害があったが、堤防決潰、流失としては神指中四合地内の延長20メートルにとどまった。床上、床下浸水250戸、宅地12戸、水田1,490町歩、畑地470町歩が流失埋没し、堤防9ヵ所の復旧費52,800,000円となっている。ただ死者10名、傷者4名の災害記録がみえるが、被害事情はよくわからない。大川沿岸の改修が一通り完成に近いため、この程度の洪水では、毎年の連続洪水でもない限り、大被害は避け得られるようにみえる。この洪水は宮川流域には殆ど被害らしいものがみられなかった。
7、近年の大洪水として顕著な昭和31年(1956)の水害の特質 阿賀川筋の大正8年以来の計画的改修のほぼ竣工からみて、昭和16年以来の洪水は、降水量の分布からみても、被害地域からも、会浄盆地の洪水常習地域であった点から、逐次補修もされて、増水量が必ずしも減じていないのに、被害が逓減してきているようにみえる。ここに昭和31年の異例な洪水が急襲してきているとみて、その特質を検討してみる必要がある。大川が阿賀川改修工事によって、ほぼ整った流路を固定してきたかにみえるのに、宮肘・鶴沼川の会津盆地南部西半の幅広い旧犬氾濫の調整がまだゆきとどかなかった所へ、その塵をつくように突如襲来した、輿様な大浜水の様相を呈していたかのようにみられる。
会津地方の総降水量からみては、あまり著大な洪水をもたらすという類ではないようにみえる。特に大川の上流田島地方は7月14、15、16日の三日間の連続雨量は153.0ミリで、記録として決して大とはいえない。むしろ盆地の降水量が大で、若松で連続雨量184.2ミリ、東山で182.8ミリ、これはこの土地で