北会津村誌 -385/534page
第三編 村 の 生 活
第一章 村の生活の諸相
一、村の生活の概説と資料の所在
われわれの毎日の生活は、全くありふれた日暮し的のことを、慣習的にやっているに過ぎないようにみえる。 しかし、たえず、もっとよい生活、暮しの豊かな生活に浮びあがりたいと、考えていないこともない。
それならわれわれの望んでいる理想の生活とは、どんなものかとなると、必ずしも、しつかり掴んでいるわけ ではない。衣・食・住の物質的な、豊かな生活を望んでいるようでもあるし、衣・食が足りれば、村人と仲よく 精神的にも悩みの少ない生活がほしいと思う。
そして、殆ど十年一日か、百年一日のような生活をしてきているようにみえるが、何十年か区切ってみると実 に変化も激しいのに驚く。特に近年の敗戦とか、機械文化の急激な発達によって、農村の生活も、めまぐるしく 変っている。これを現在のまま記録して、そのよってきた変遷を解き、その意味を考えることは、われわれの生 きてゆくために、実に大切なことであるが、目の前がありふれた生活であるために、意を払って、見つめようと もしない。
会津藩などでも、平和な生活が永くつづくと、毎日の生活を考えてみようとする識者がでてきたものか、今か ら三〇〇年ほど前の貞享二年(一六八五)に、各村に風俗・習慣の書きあげをさせている。その殆どは、現在記