北会津村誌 -445/534page
り丁度死んだ時刻にあっていることを知ったなどとは、今でも、全然無いことではないというようにいわれて いる。
お盆には盆火を焚いて霊魂を盆棚に迎え、終ればお送りする。その時お婆さんなどが、背に両手をあてて、墓 よりおぶってくるなどと語っていたが、今の若い者に信じられるかどうか。しかしまだ、霊魂は全く実在しない と、これを否定できる人もないように思われる。
死去以前に一族へ知らせに行くのをせっかくといっている人がいる。折角の知らせの意であるというが、よく 意味はわからない。
貞享二年の風俗帳に、死んでから二、七日、即ち十四日目、三、七日、即ち二十一日目に、わかを頼んで口よ せをするということが書いてある。岩手の山村などは、現在もこの風をもっているところがある。北会津村で、 現在このような日に、必ずおわかさまを呼んで口よせをするというようなことは聞かないが、近年までこのよう な風が全くなかったとはいえない。
七月一日から冬木沢参りが始まる。新仏の家や近親の人々が参る風習があるが、ここにはもと、口寄せをする おわかさんが集ってきて、死人の代りに、近親の問に対して答えていたことがある。今でも青森県下北半島の恐 山などの祭日にはこの口寄せが行なわれている。
そこまで考えつめなくとも、死人ができると、一方魔よけといって刀剣などの刃物を死体にのせながら、枕だ んごを供えたりして、ねんごろに葬うことは行なわれているから、霊魂の不在を信じてもいないようにみえる。
2、葬礼 まず近所の婆さんだちが集って、死者の衣裳縫いをやる。脚絆、白衣、おいじるに至るまで、白布 でつくってまとわせ、仏つくりを行なう。他方葬式の飾りつけなどの仏つくりは老人の念仏爺さんだちが行なう。