北会津村誌 -489/534page

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ちが、爺さん、婆さんの育つ頃より、人格的にも教養を積んでいると果していい得るかどうか。この日本全部の 話題、世界の話題に通じることは、一つの進歩に違いないが、流れ、系統はあっても、郷土的に、会津は会津な りに、自分の村は村なりに、住みつくために身につけなければならないことを、身近かに語り伝えてきた昔話は 今殆んど失われようとしている。

 「昔、昔あるところに」に始まって、「ざっとむかしさかえた」に終る。時代も場所も明確でない、話の筋道 を通すのが所謂昔話である。

 もう失われかけている、この日本国民が育ててきた口承文芸としての昔話の研究は、柳田国男が日本民俗学を 体系づけてから、相当基礎的研究が進んでいる。生誕に関する昔話としては桃太郎・一寸法師・爪姫物語、婚姻 に関しては、天人女房・鶴女房・きつね女房・へび女房・魚女房・へびの婿入り・さる婿入・難題婿など、つぎ は継子の話で、継子の栗拾い・まま母、財宝とか福運に関するものでは、藁しべ長者・炭焼き長者・養老清水・黄 金の斧・ねずみ浄土・地蔵浄土・花咲爺・こぶとり爺・屁ひり爺・舌切雀、怪物と災難の昔話では、食わず女房・ 化け物退治・蛇退治、智恵と笑話に関するものでは、化けくらべ・宝物交換・姥棄山・和尚と小僧・ねずみ経・ 屁ひり話・うそつき男の話・長い名の子・果てない話・馬鹿婿・馬鹿嫁の話・愚か息子など、鳥獣の話では、がん とかめ・古屋のむりべ・さるとがまの寄合田・しっぽの釣・かちかち山・かもとり権兵衛・横とり者の分配など

 こうして題目をあげてみると、昔を思い出し、その話なら知っでいるという老人も多うかろうと思う。ひまを みて書き残してはくれないであろうか、冥土の持ちみやげにするには、あまりに惜しい、日本古来よりの尊い貴 重な文芸伝承であり、郷土にきてまた育てあげられた逸品でもある。

 これに対して伝説となると、少し違って、昔、ある所に、ほんとうにあった話として伝えていること、これは


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