北会津村誌 -490/534page

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昔話ではやはり単なる話であって、本当にあったかどうかは問題にしていない。つぎに伝説は必ずある村里に定 着して、時には史実を混じかねないようなもので、話の筋と事実を語れば、語る人、内容によって変ってこな い。昔話となると、一つの文芸伝承であるから、「昔、昔あるところに」から終りまで形式があって、内容がぬ けたり、語り方をまちがえると、時には毎晩同じような昔話を語り聞かせられている子供たちは、「お婆さん、 そこぬけた」とか、こんな話、こんな対話をつけたすのだと、補充しないと、一つの作品にならないほどのもの である。お婆さんが疲れてねむくなり、話をぬくと、ただちに、子供から逆に、形式を要求されるほどのもので ある。

  二、昔 話

 1、さんぼうの助とおとふれの話 昔話は長い叙述であるから、ここでは二つだけ郷土的なものをのせるにと どめたい。これもあまり郷土的になって、その場所が小谷地河原とか、どこどこであったとなると、伝説に近く なる。

 昔、昔あるところに、さんぼうの助という狐がいたそうだ。ある時位をとりに京に出かけることになった。と ころが一つ心配なことには、自分が肌身離さずに持っていた大切な巻物があった。考えたすえに、お寺の坊さん に頼んでいくことになった。そしてここには、おとふれという悪い狐がいて、必ず何かにばけて、この巻物をと りにくるから、決して渡してはくれるなと、くれぐれも頼んだ。

 さんぼうの助が旅立ってから、果して数日目に寺の門前に威儀を正した代官が武者揃えでやってきた。「こら 坊主、そのほう、さんぼうの助から巻物をあずかったそうだが、渡さないと容赦しないぞ」とおどしつけた。


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