北会津村誌 -492/534page
た。(石原遠藤おさよ談)
いくらか会話はながながしくなるので略してあるが、鳥獣報恩の話に平家物語をとり入れた、面白い筋書きの 昔話である。
2、人身御供の話
「むかしナアある所に情深い庄屋様があったとよハアー」
「おばんちゃ 庄屋様ってなんだア」
「庄屋様つうのはこの辺のおやかっつあまのことだべえ」「うん それから」
「ある時その庄屋様が夢を見だとサア なんでもハアおっかねえ面っきで白い頭の毛はぼうぼうとして前さ下 り金壷まなぐで白い着物を着て枕もとに突っ立って『こらやいおめえの家のぐしに白羽の矢が立ったぞ、おめえ は娘が八人もいるが十八になるずうと一人ずつ人身御供に上げんだぞ 俺はこのつんず(鎮守)様のお使だ』」
「人身御供ってなんだ」
「それは生きた人間を神様に上げることよ」
「おっかねえ 神様だごど」
「『ええか娘が十一になった秋の十月十日の夜白木の唐櫃に入れて十二時かっきりに鎮守様の森に届けんだぞ 忘れんな さもねいとこの村には火難・水難・餓死とつづいて亡びっつまあぞ』と言って消えてしまったつうだ」
「庄屋様は悲しい思いをしながらも七人の娘を次々に人身御供に上げてしまった。さて年月は水のように流れ て最後のたった一人残った娘の番になってしまった。なんぼ村のためとは言いながら庄屋夫婦の悩みは一通りで はない。娘を中にして今夜は最後の別れだと名残を惜しんでいる時、表の戸口をトントンと叩く音がする。村