北会津村誌 -496/534page
もともと伝説とか伝承を史実として裏付けしようとする人は多いが、ある程度の信拠性はあっても、伝承はど こまでも伝承としておかないと、誤ることができる。
4、石の枕 これは小松と上荒井の間が、萱野や小松原で、人通りも少なかった頃の話という。行きくれて泊 った宿に二人の老婆が住んでいて、石の枕をさせておいて、夜中に石の棒をもって撲殺し、金品をはぎとったと いうのである。
その頃一人の牧童があって、道に迷った旅人をみると、
荒井小松に宿とりやるな
石の枕に槌ひとつ
と謡って、身の危険を暗示し、後には旅人は嫗の宿には泊らなくなったという。この牧童は鎮守神十二天の化身 であったろうとも伝えている。これは安達が原の鬼婆さんの伝説とも似ていて、神仏の利益を説こうとした説話のようでもある。これを小松 の東の四つ壇の古墳の棺蓋の石であろうともいい、小松・上荒井間の伝説と同じともいい、全然別個な話である ともいう。扇状地の扇面の上半が荒野であった頃の面影を写した伝説の一つであろう。
5、礫の宮 これは礫の村の項で述べたが、磐梯明神の投げたつぶてがここに落ちて、それを祭ったというこ とで、支配限界を物語ろうとした磐梯明神の御利益伝説かと思う。
6、白い雀 これはそう昔の話ではないように語られている。
大川筋の左岸のとある村に一人の百姓がいた。農業だけでは暮しが立たないので、大川で川魚を取ったり川石 を採ったりして生活の資にしていたので、誰いうともなく石鰍(いしかじか)の綽名をつけられた。