北会津村誌 -497/534page
ある日例のように本郷川原に出て漁をしようと思って、中洲を歩いていたら、白い小鳥がチチッと鳴きながら 飛んでいる。見ればどうも雀らしい。珍しいこともあるもんだと思って、捕えたくなり、手にしていた網を投げ かけると、うまく引っかかった。あの男は大切にはけごに入れて手拭で蓋をして家に持ち帰った。
「おっかあー今けえった。これを見ろ。これを売るんで鳥籠も出してくろ」
彼はそう叫んだ。妻女は鳥籠を持って出て来た
「おとうーこりゃ雀じゃねえだかよ 白い雀だ どこで捕った。」
「川の中島だ、おらこれ珍しいで、殿様にでも上げべえと思うだ」
「殿様さ? おらがか? 駄目だ、おらが殿様は渋柿宰相というでねえか。こんなの上げたって『予に進上す るとは奇特の至り』とか言って只取りだべえ。気の毒の至りだわい。それよっか仙台様に上げて見っせ、大枚の お金くださんべえ。」
「ああこれあんまりずねえ声出すな。人に聞えんぞ。やっぱりにしはえいこという。うんじゃ仙台まで行って くっか。善は急げだあ、早く出かけんぞ。」こうしてあの男は女房の入れ知恵で磐梯裏の間道を抜け仙台表に出た。仙台侯は世間周知の通り竹に雀の紋所 である。当時俗謡に、
竹に雀は仙台さまの御紋
三っ葉葵は天下さま
と歌われた。あの男はいかめしく固めている青葉城の城門前に平伏し「恐れながら」と事のあらましを申し出た。番卒は