サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-003/81page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

葦」であるゆえんの一つは、この想像力にあるといっても過言ではありません。無限の宇宙や微小な世界への探索も、人間の想像力がその原動力であるといえます。
 知的好奇心を持ち続けることは、考えることの礎をなします。子供のころの好奇心を大切にし、好きなものをすべて集めようとする気持ちは、誰でも持っています。そういう意味で、「集めることと分けること」は、子供たち自身が、自分の思考の体系を形作り、自己の世界観を形成する第一歩といえるのです。そのためにも、自分自身の足で歩いたり、自分自身の身体で自然などと触れたりする体験が重要な意味を持つといえます。

(2)学習指導要領にみる思考力・表現力
 本冊子で柱としている「思考力」、「表現力」、「発想」の相互の関わりについて、学習指導要領をみると、次のように述べられています。
 まず、中学校学習指導要領(平成元年告示)の解説によれば、「表現」の内容の初めとして[発想についての指導事項]の解説には、発想の素材となる対象の収集範囲を広げ、「収集整理した素材を正しく理解し、価値判断する。それをよりどころに自分自身の考えを客観的に見直し、考えをまとめ、それまでの考えを修正したり、新しいものの見方や考え方に触れて、考えを深めるという方向に学習を発展させていく。」という指摘があります。
 高等学校学習指導要領解説によれば、「思考力とは、物事を筋道を立てて考える能力のことであるが、高等学校においては、物事の筋道が分かるという段階から更に進んで、課題を解決しようとする創造的な思考力が求められる。」とされています。
 「国語1」の「A表現」では、「表現力と思考力とは、相互に作用し合うものであり、表現していくうちに考えが徐々にまとまることも多い。話や文章を進めるに従って次第に主題や論旨が明確になり整ってくる場合もある。」と述べられており、「表現力」と「思考力」が表裏一体となって相互に作用し合うものであることが示されています。
 また、「国語表現」においては、「適切な話題や題材を取り上げ、それについて情報を収集、整理し、自分の考えを深めて、主題や論旨を明確にすること」という点について、「『自分の考えを深めて」とは、取り上げた話題や題材について十分に検討し、自分の考えを確かめたり、整理したりして考察を深め、表現しようとする内容を高めることを意識的に行うようにすることである。『自分の」とは、思考や表現の独自性をも含めて述べたものである。」という記述があり、「発想の素材」と「思考」、そして「表現」とのあるべき関係が示されています。

●表現力育成
 一道草のすすめ一

 結果だけが大切にされ、過程や考える途中がないがしろにされると、人は考えることをやめてしまう場合があります。
 考える楽しみとは、じつは「道草をする」ことにあるのかもしれません。散歩をするように自由に、自分の行きたいところを時間をかけて歩き回ることも大切です。
 考える力を育成することの重要さはだれもが認めます。しかし、考えることの楽しさを教える人は多くはありません。子供たち一人一人は、大人が考える以上に豊かな世界をもっています。考える時間をもつことが実は生きるということにもつながっているのです。
 考える喜びは、結果よりもむしろ過程にあります。何が生まれるかということ以上に、どう考えたかが大切になるといえます。

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

Copyright (C) 2000-2001Fukushima Prefectural Board of Education All rights reserved.
掲載情報の著作権は福島県教育委員会に帰属します。