サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-004/81page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

2思考力・表現力を育成する授業を創るために

 学ぶことの原点は、自分を取り巻く様々な事象についての「発見」や「驚き」です。常識的なことや自明だと思われていることに対して、「そうだろうか」「本当にそうか、確かめてみたい」などという気持ちを大切にするとともに、素朴な疑問を授業の中で取りあげることによって、考えることの重要さを確認することが求められます。
 情報化が進むこれからの社会において、テレビ・ラジオ、新聞・雑誌・書籍、インターネット等のメディアをとおして情報に接する機会は飛躍的に増えていくものと考えられます。情報に振り回されることなく、情報に対して自分なりの判断の基準を持ち、情報そのものの価値を問う「眼」や判断する「力」を育むことが大切になるわけです。
(1)発問と問い返し
 授業を構成する活動としては、教師の側からいえば、説明、発問、板書、指示等があげられます。また、生徒の側からすると、質問、ノートの確認、考えること等をあげることができます。この中で、とりわけ教師による「説明」と「発問」は授業の核をなしているといえます。
 発問の良し悪しが、授業そのものを決定すると言っても過言ではありません。生徒の思考力を育成する上でも発問は授業そのものの根幹をなしているといえます。また、発問とともに、生徒の返答に対する「問い返し」も重要になります。生徒の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、もう一度生徒自身にその言葉をそのまま返してやることで、生徒は、自分の言葉を吟味し、再考する過程を経ていきます。問い返しは、生徒の考えを揺さぶり、自分の考えをもう一度確認することにつながるのです。大切なことは、生徒の発言を引き出すとともに、生徒の考えに揺さぶりをかけることであり、自明であると考えられていることに疑いを投げかけることです。そこから驚きが生まれ、発見が生じ、自分で考えることの深い喜びが生まれてくるのです。
 また、疑問点をもとに課題を考え、自分で解答するという作業を重ねるなど、主体的な学習を進めていくことも授業の工夫の一つです。生徒自身が、自分で問題を作成したり、授業の中でも自分の疑問を追究していくことによって、教材に対する深い理解が得られるのです。疑問を大切にすることが「学び」の出発点だといえます。

●発問と問い返し

 「発問」とか「問い返し」とかは授業のいのちである。ほとんどの授業は教師の「発問」とか「問い返し」とかによって展開していくものである。教師の「発問」とか「問い返し」とかによって子供はわかったり、思考を促されたり、質の高いものを豊かに獲得したり、自分の思考を拡大されたり、新しい発見をしていったりするものである。したがって教師は、一つひとつの「発問」や「問い返し」を的確でするどいものにし、もしくは豊かなものにして、いつでも子供が豊かにふくらんだり、新しい発見をしたりしていくようなものにしなくてはならない。そのためには、相手に響き、相手からはね返ってくるような「発問」や「問い返し」をしていくようにしなくてはならない。
 (『教育学のすすめ』斎藤喜博 岩波書店)

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

Copyright (C) 2000-2001Fukushima Prefectural Board of Education All rights reserved.
掲載情報の著作権は福島県教育委員会に帰属します。