サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-016/81page

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(3)相手を想定する
   一だれに伝えるか一

●「受容的な読み手」を想定する
 表現するとき一番大切になるのは、「だれに対して」「どのような」思いや考えを伝えていこうとするかということです。伝える相手が明確になれば表現する内容も深まってきます。わかりやすい文章の第一歩も、自分の考えを伝える人・伝えたい人を想定することにあるといえます。
 例えば、サン・テグジュペリは、「星の王子さま」を、子供だったころのある友人にささげると述べています。彼は、そのような「読み手」を想定(創造)することで、固有の作品世界を創り出しているとも言えます。私たちにとっても、「読み手」との関係をどう想定するかは、文章を書く上で極めて大切な問題です。「書き手」と「読み手」の関係が明確になれば、主題も内容も明確になります。
 また、自分にとって最も親しみ深い存在である自分自身を「読み手」として文章を書いてみると文章を書くことの抵抗感が幾分か緩和されます。日記や手紙、あるいはメモの形態であっても、読み手を想定することによって文章を書くことが容易になります。

【例1】友達を想定した文章
・友達に話すような感じで読書感想を書いてみよう。
・親しい友人に愛読書を紹介する文章を書いてみよう。
【例2】興味・関心のある人を想定した文章
・「福祉の在り方 一車椅子からのレポート一」
・「音楽で綴る修学旅行記」

「書き手」が想定する「読み手」が明確になると、心を開いてやすらかな思いでのびのびと表現することができます。

●対立意見を想定して考えを深める
 生徒が生き生きした表現を回復し、より深く思索するための方法に習熟する方法として、現実の立場(自分の意見)を離れて、フィクション(もし自分がその意見の立場だったら)の世界でゲームとして討論してみることも有

相手を想定する

●語る人がいること
 海外の作家の多くが、自分の作品を身近な人にあてて書いていることからわかるように、作品を生み出すもととなるのは、「伝えたい」という思いであり、「伝える」相手そのものの存在といえます。

授業の窓

 思いを伝えるという意味で、手紙を書く機会を設けることは大切です。また、小説や物語で、登場人物になりきって作文を書くという工夫もあります。

●実践例
 一和歌に込められた思いを手紙にする一
 『伊勢物語』第二十三段
 「筒井筒」
手順
1)本文の音読、語句等の確認
2)男の手紙例をあげ、女の返しを手紙にする。
3)手紙の文章を発表する
4)男女の和歌が、求婚と承認の歌であることを確認する。

ずっと会っていなかった君へ

 覚えているかい?僕たちは幼い頃、あの井戸の所でよく遊んだよね。そして、井戸の高さで背比べした。君はぼくより小さくて、いつも背伸びをしていたね。あの頃の君はとてもかわいかったよ。だ

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