サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-018/81page

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(4)視点を変える
  一多様な視点・多様な見方一

●物の見方
 自分の考え方や、前提としている立場を変えることにより、私たちは新しい自分を発見することができます。日常的な生活から一時的に離れ、物の見方を変え、新たな視点に立つことは、思考を活性化する一つの方法です。
 詩人の長田弘氏の次の作品を味わってみましょう。

鉄棒

 長田弘

 誰もいない冬の小公園の片隅にある'本の鉄棒は知っているだろうかほんとうは神さまがこの世にわすれていった忘れものなのだ。ハッとするほど冷たい黒光りした鉄棒を逆手に握って、おもいきり地を蹴ってみれば、そうとわかる。一瞬、周囲の光景がくるりと廻転したとおもったら、もうきみの身体は、いつもの世界のまんなかに浮かんでいる。
ふしぎだ、すべての風景がちがってみえる。ほんのわずか目の高さがちがつただけで。息をしずめ、順手にもちかえて、きみは身体を廻転させる。もう一ど。またもう一ど。すると、ありふれた世界がひっくりかえる。電線、家々の屋根、木の梢、空の青さが、ワーッとこころにとびこんでくる。空気はおそろしく冷たいが、鼓動は暖かい。自分の鼓動がこの世の鼓動のようにはっきりかんじられる。しっかり握りなおす、神さまがここにわすれていった古い鉄棒を、きみは世界の心棒のように。
(「深呼吸の必要」長田弘 晶文社)

また、旅に出ることは、日常とは異なった視点でものを見る機会といえます。三木清氏は、
旅について次のように述べています。

 旅は習慣的になった生活形式から抜け出ることであり、かようにして我々は多かれ少なかれ新しくなった眼をもって物を見ることができるようになっており、そのためにまた我々は物において多かれ少なかれ新しいものを発見することができるようになっている。平生見慣れたものも旅においては目新しく感じられるのがつねである。旅の利益は単に見たことのない物を初めて見ることにあるのではなく、全く

●新たな視点の獲得

 旅に出ると、その土地その土地の言葉に出会うことができます。それが自分の考え方の狭さに気づかせる契機にもなるわけです。また、普段は会話を交わしたことのない人たちにインタビューをすることによって、自分の見方とは全く異なったものの見方や考え方があることを知ることもできます。自分とは違うものとの出会いによって、自分自身が見えてくるのです。

授業の窓

中学校の教科書から

●学習のしかたを学ぶ

「ちょっと立ち止まって」(桑原茂夫)には、次のような記述があります。
「わたしたちは、ひと目見たときの印象にしばられ、一面のみをとらえて、その物のすべてを知ったように思いがちである。しかし、一つの図でも風景でも、見方によって見えてくるものがちがう。そこで、物を見るときには、ちょっと立ち止まって、ほかの見方を試してみてはどうだろうか。中心に見るものを変えたり、見るときの距離や角度を変えたりすれば、その物の他の面に気づき、新しい発見のおどろきや喜びを味わうことができるだろう。」
(「国語1」光村図書P.42)

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