サクシード2中学校国語から高等学校国語へ-032/81page

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10)自然に思いをはせる
  一The Sense of Wonder一

●満天の星空の下で
 大自然に思いをはせて想像力を養っていくことが大切です。普段はなにげなく見過ごしているものが、ある瞬間、感動をもって自分の目の前に現れてくることがあります。
 次の文章は、レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」の一節です。

 子どもといっしょに自然を探検するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感受性にみがきをかけるということです。それは、しばらくつかっていなかった感覚の回路をひらくこと、つまり、あなたの目、耳、鼻、指先のつかいかたをもう一度学び直すことなのです。
 わたしたちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識しています。しかし、目にはしていながら、ほんとうには見ていないことも多いのです。見すごしていた美しさに目をひらくひとつの方法は、自分自身に問いかけてみることです。
「もしこれが、いままでに一度も見たことがなかったものだとしたら?もし、これを二度とふたたび見ることができないとしたら?」と。

 このような思いが強烈にわたしの心をとらえたある夏の夜のことをわすれられません。
 月のない晴れた夜でした。わたしは友だちとふたりで岬にでかけていきました。そこは湾につきだしていて、まわりはほとんど海にかこまれていたので、まるで小さな島にいるようでした。
 はるか遠くの水平線が、宇宙をふちどっています。わたしたちは寝ころんで、何百万という星が暗い夜空にきらめいているのを見あげていました。
 夜のしじまを通して、湾の入ロのむこうの岩礁にあるブイの音がきこえてきます。遠くの海岸にいるだれかの話し声が、一声二声、澄んだ空気を渡ってはこばれてきました。
 別荘の灯が、ふたつみっつ見えます。そのほかには、人間の生活を思わせるものはなにもなく、ただ友だちとわたしと無数の星たちだけでした。
 わたしはかって、その夜ほど美しい星空を見たことがありませんでした。空を横切って流れる白いもやのような天の川、きらきらと輝きながらくっきりと見える星座の形、水平線近くに燃えるようにまた

大自然に包まれる
●感動すること
 自然との触れ合いで得られる感動が、豊かな心を育んでいくのです。例えば、朝日連峰や飯豊連峰あるいは、遠く中央アルプスの山々や富士山など、高い山に登って見る朝日や夕日は普段の生活で忘れがちな壮厳さや大自然への畏敬の念をよび戻してくれます。
 刻々と変わる空の色や自分を包む広大な空間が、自分は生かしてもらっているのだということや、自分は何か大きな存在に包まれているのだということを実感させてくれるからかもしれません。
 授業の中でも、これまで生徒一人一人が体験したかけがえのない「感動」をよみがえらせる機会を持ちたいものです。

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