中・高連携のために-110/136page
いく過程を録音して、先生はこうして教えているが、生徒はこんなところでつまずいたり、こんなふうにして文章の意味をとろうとしている。実際に生徒の活動の実態をとらえて参考にする。
■ポートフォリオ(portfolio)という方法
また、ポートフォリオという方式があり、特に作文などの指導によく使われています。たとえば1年間、書いた作品だけではなく、課題を与えたときの生徒自身の反応を全部保存しておくという方法がある。
要するに1年間の学習の進歩の過程をまとめておく。そして、生徒の学習の過程を細かく見ていこうという試みがある。
つまり、学習内容を生徒が身につけた、身につけないということを点数だけで評価していないだろうかということが、中・高連携を考えるときの一つの視点になる。
例えば、高等学校に入学後、生徒に試験をして、生徒がどれだけ力があるのか、あるいはどこに問題があるのかを調べて指導の材料にするときに、結果だけではなくて過程を見てそれを参考にすることが必要です。
■生徒のニーズにあった学習指導を
次に、生徒のニーズを考えることが大切です。高等学校の場合には様々な学校、学科がありますから、それによって学習内容に対する生徒のニーズも異なる。一律に指導するのではなく、生徒のニーズを細かくとらえて、それにあったカリキュラム、教材を工夫することが大切です。
そして、最後の問題は、指導方法の問題です。中学校の指導方法と高等学校の指導方法が同じであるべきか。違うところがあるとすれば、それはなぜか。どのようにしたらよいか。私はこれは中・高連携を考えるとき一番具体的な問題だと思います。例えば、中学校の卒業生が一学期間、高等学校で指導を受けた後、中学校の時は楽しかったが、高等学校では全然楽しくない、全然わからないということを言うことがかなりあります。
中学校の先生方はこれだけ指導をして、これだけ英語を好きにして高等学校に送りだしたのに、高等学校にいって、一か月もたたないうちに英語が嫌いだと帰ってきた。高等学校の先生方は何をしているのか。せっかく我々が育てた生徒をどうしてくれるのか、そういうふうな意見が出る。
一方、高校では、中学校でもっと基本的なことを教えてきてもらわないといけない。関係代名詞の基本的な用法もわからない、中学校では何をしているのだ。極端に言えばそういう形で中・高の意見の対立が起こります。
そこで大切なことは、中学校と高等学校では学習内容も違うし、指導方法も違わなければいけないということを見落とさないことです。確かに中学校では、コミュニケーションを中心とした楽しい授業を構成するということが基本かもしれません。それが高等学校に入ってきますと基本を踏まえながら、文法事項も中学校と同じような取り扱いをしません。
Copyright (C) 2000-2001Fukushima Prefectural Board of
Education All rights reserved.
掲載情報の著作権は福島県教育委員会に帰属します。