教育福島0002号(1975年(S50)06月)-008page

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いし、それはまさに清選されたものでなければならないし、精撰することによって、精選や清選の実が具体的にあがるのでなければならないと考える。

(二) さて、教材とは何であるか。その意味や機能が、たしかにおさえなおされることによって、その精選の立場も確かにされようというものである。

教材は、おたがい先刻承知のとおり、教育の目的・目標を達成するために必要とされる材料である。この材料となることができる素材は、数多くあるわけである。だが「教材は素材を教育の目的・目標から整理したものであり、子供の学習活動の基盤と目的や目標を見通した中に位置づけられたものである。従って、素材そのものでも、文化財として伝承・伝達されるべき内容のすべてでなければならないというものでもない。目的・目標に照らして、子供の心身の発達条件(経験の質や量をも含めて)や論理的な統一活動が、具体化されるのにふさわしいものでなければならない。教材としての機能は、子供の活動を引き出すところにある。すなわち、全体的に、また部分的に子供の活動に特徴を示唆しながら、価値の体系や知的な体系にまとめて行くはたらきをするものが教材なのである。」注1 しかもなお、「われわれは、子供がある教材を『学習できる』(can)からといってただちにその教材を『学習すべき』(should)であるとはいえないことに十分注意しなければならない。」注2ところが、「今日の日本の諸学校において指導されている諸教材が、(中略)過去から存在していたからという理由で存置され、あるいは新しい社会や文化の要請という理由で付加されて、すべてのものが雑然と置き並べられているという感じさえ抱かされる。そうして教育内容は量的に激増し、質的に上昇し続けて行く。(下略)。」注3 なお現場において、教材内容の展開における系統性を無視するかのように、ある学年の学習内容に深入りしすぎる向きもあって、指導者自ら教材量を過剰にしてはいないかと見られるふしもあるようである。

(三) 教材は、既に、前述したような立場から精選されていなければならないのであるが、この作業は、三つの段階において行われる。第一の段階は学習指導要領作成の段階であり第二は教科書作成の段階であり、第三は、教師の教材研究の段階である。注4 現行学習指導要領作成の段階でも教材の精選がうたわれたのであったが、今日既に、また教材の精選が問題になっているし、その作業の基盤づくりが、着々進められているわけであるが、それは、教育の実践を通して、評価されたからであって、第三段階における教材研究の重さを、改めて自覚すべきだと考える。

ところで、第三段階において、教材の精選とは、どのような意味をになうものであろうか。

第一の段階では、目標がおさえられ、その目標達成のための内容が提示されてあるし、第二の段階では、具体的に教材を選定して、第一段階の内容の肉付けをしているわけである。しかし、学習する子供一般を対象としているものであるから、具体的な子供にとって、それらの教材が適切であるためには、どうあるべきかが吟味されなければならないことは当然である。

この場合、学習指導要領の示す目標及び内容が、うのみにされることなく、それらの持つ教育的意味を十分にかみしめつつ、縦横の関連を吟味して、その全体構造を自ら構成するかたちにおいて受け止めるといういうならば、主体的確認をするのでなければならないと思う。

このようにして、教科書の教材に立ち向ったとき、具体的な子供たちが立ち向うべき教材として、真に適切性を保有するものはどうであるべきかの目安もつけ得るであろう。

もし教科書の教材で、具体的な子供たちにとって、適切性が十分でないと判断した場合には、他に適切なものを求めるべきであるし、教科書の教材そのものに対しても、その適切性を十分ならしめるための配慮を怠ることはできないのである。教材は、まさに教材にふさわしくされるすなわち、教材化されるべきものである。このことは、筆者の言う教材の精撰にほかならない。

(四) 第三段階の教材精選にかかわる考察をして来たわけであるが、教材の適切性についてなお考察しなければならない。というのは、この条件が、教材の精撰の目安となるであろうからである。いまその基本的なものをあげれば、次のように考えられる。

(1)学習指導要領の示すそれぞれの目標を達成し、人間観・自然観ないし世界観への道を開くのにふさわしい内容注5である。

(2)基礎的・基本的なものであって一において多を「開く」力を引き起こすことができると考えられる内容のものである。例えば、小学校における平面図形の面積を求める教材における正方形(長方形)の面積を求める教材の如きである。注6

 

 

 


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