教育福島0002号(1975年(S50)06月)-012page

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ることが望ましい。そして、記録を取り、計画を修正し、成果を累積して行くことが大切である。

(二) 研究を重点的・実践的に進める。

研究をどの教科もどの学年も同じ力点を置き、同じ歩調で進めることは困難であり、成果もあげにくい。そこで、学校や地区においては、重点を置いて進めるのがよい。次のような工夫も考えられる。

1) 重点教科をきめて研究を進める。

例えば、一・二年では国語と算数を重点とし、他の教科は、学校の目標や担任教師の特性に合わせて選ぶようにする。

2) 授業研究によって、教材の精選と指導の重点の見方、考え方を高めて行く。

研究を実践的に進めるために教材の精選と指導の重点化を研究課題とした研究授業を行い、一つの教材をもとにして、単元の中で、一時間の授業の中でどのように軽重をつけて取り扱うかを研究し合う。そこで話し合つたことを各自が毎日の授業で吟味し、実践し、検討して改善し、次の研究授業で改善案を試みるようにする。

このようにして、次第に教材精選の観点とその指導法を明らかにし、教材の軽重に応じた指導過程を確立して行くようにする。

なお、授業の評価は、単に一時間の授業の流し方の巧拙だけにとらわれることなく、重点の置き方に工夫を加えることによって、児童・生徒に自ら学びとる力が育ち、望ましい方向に変容しているかどうかで判断することが大切である。

3) 補助教材の精選を図る。

教科書以外の図書及びその他の教材を使用する場合においては、必要最少限度にとどめ、児童・生徒の学習上の負担が過重にならないように特に配慮すること。

 

七、「精選や重点化」の具体的な進め方

 

(一) 学年研究部や教科研究部で進める方法や手順

1) 学年目標をおさえ、年間の見通しを持つこと。

年度当初において、学年目標を確め、教科書を通読して、年間の単元(題材)配列と指導内容の構成をは握し、年間の見通しを持つようにする。

2) 学習指導要領と教科書で基本的事項をおさえること。

各単元(題材)の中心的なねらい(基本的事項)は、学習指導要領の目標・内容と照合してどこに当たるかを見きわめ、それが教科書のどの部分にどのように表現されているか、その箇所に朱線を入れるなどして、しつかりとおさえる。

3) 年間指導計画で教材の重点化を図ること。

基本的事項や根幹となる指導内容が、現行の学校の年間指導計画のどこに出ているかをさがし、そこを指導の重点としておさえる。

4) 重点として取り出した事項について、指導の専門書によって補強・修正をすること。

5) 教材研究において、枝葉となる部分を明確にし、そこは簡素化又は省略すること。

6) 発見的な過程を経て、児童・生徒に思考判断させようとする事項と、的確に教えるべき事項とをはっきり振り分けること。

(二) 学習方式(例えば範例学習)との関連で研究を進める方法と手順

1) 学習指導要領や教材そのものの研究をもとにして、類型的に同じ教材をまとめてみる。

2) その教材群の中から、児童・生徒の能力や地域の実情などに最もよく合った教材を典型として選び出す。この教材で学習を深化させる計画を立てる。

3) 他の教材は類推させるか、思い切り簡素化して取り扱うようにする。

4) こうした方法で、それぞれの教材群について教材研究をし、年間指導計画の補正をする。

(三) 国や学者集団の研究に期待する方法

国においては、文部大臣の諮問を受けた教育課程審議会が、小・中・高校を通して調和と統一のある教育課程の編成のための研究を続けている。これは、詰め込み教育の解消をねらいとし、従来の横のバランスから、小・中・高校一貫した縦のバランスを取ろうとするものである。この結果は三年後あたりに案として提示されるものと予想される。

一方、文部省は、全国道府県にそれぞれ一校ずつ研究指定校を定め、現場の実践から教科書の内容の難易、量の多寡等についての資料収集を続けて来ている。この方面からの改善策も当然提示されることになるであろう。

また、教科の基盤となる学問体系から中心観念を選び出し、それを核にすえた教材構造を作り、教科内容を作り替えるような根本的な研究は、学者集団の長期にわたる協力推進によって初めて可能となろう。

(福島県教育庁義務教育課主幹)

 

 

 


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