教育福島0002号(1975年(S50)06月)-017page
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二、教材精選の実践例
福島市立福島第三小学校
(一) 六年の学年目標と教材精選
六年の社会科は、小学校社会科の集大成とも言うべきもので、学習指導要領に示された目標を検討し要約してみると「民主主義の考えに基づく政治を進めているわが国は、先人の働きによって特色ある歴史と伝統を築いて来たが、現在、平和な世界の実現を目指す国際社会の一員として重要な役割を果たしている」と、とらえることができる。そして、これを支える単元の構成は、政治、歴史から世界の諸地域、国際理解にまで及び、他の学年に比してかなり広範にわたっている。
各単元では、第一に、日常生活と政治の働きとの関係から入って、人々の願いを実現する民主政治の根本的な働きをとらえさせるために、単元「国の政治とその働き」を設定している。
第二に、このような政治の学習を受けて、現代のわれわれの生活や政治はどのような歴史的な歩みをたどって形成されたものかを追求しようとする問題意識に立って、年間のおよそ半分の時間を「日本の歴史」の単元に当てている。
第三に、現代の日本の人々の生活や政治の歴史的背景を知った子供の目を更に空間を広げて、世界の人々がさまざまな自然環境や気候条件のもとで特色ある生活を営んでいる様子や、現在の世界における国家間の相互の密接な関連などを理解させようとして、「世界の諸地域」や「国際理解」の単元を構成している。
そこで問題となるのは、このような広い範囲にわたる領域について、仮に安易な取り扱いをして行くとすれば、単元の目標はおろか、学年の目標到達などとうてい望むべくもないであろう。それだけに各分野の抑えどころを絞らないと教材精選など成り立たなくなると考えられる。
(二) 「日本の歴史」における教材精選の観点
従来、歴史教材では、ともすると通史の扱いになったり、細かな史実を深追いして、内容過剰に陥る危険性があった。それを避けるために、小学校の歴史学習にあっては「概括的・基礎的な歴史の知識を媒介として、子供を歴史的世界にいざない、歴史的な見方・考え方と歴史への興味を体得させる」(山口康助氏)ことが重要だと考える。
そこで、観点を明確にして六年の歴史学習のねらいを、各時代における歴史的な資料(人物・遺産)を手がかりに、それぞれの時代において人間は、いかに生きようとして来たか、人間の生き方についての各時代の特色の追求ということにすえて、教材の精選を図ることにした。
(三) 指導計画の概要
以上の観点に立って各単元の構成と時間配当を行う場合、思い切って重点をかける教材と時間の配分が比較的少ない教材をおいて、その時間数内で消化できる学習内容を精選して行くことにした。
次に各単元の中心教材の選択に当たっては、その時代を特色づける、あるいは代表する人物とか文化遺産を活用し、子供たちがこれをよりどころに問題を追求したり、歴史的ふんい気にひたりながら単元のねらいが達成できるような重点化への配慮を試みた。
これを福島市の広域カリキュラムと比較してみると次の(右下表)ようになる。
(四) 小単元「鎌倉武士」の実践
(1) 「鎌倉武士」の構造と指導計画
小単元「鎌倉武士」では、武士が政治の実権を握り、実際に政治を行う過程を取り扱う。ここに代表的人物として源頼朝、北条時宗、佐野源左衛門などを登場させ、武士の暮らしや気質に観点を当てて小単元を構成した。この単元を成立させる基本的事項としてA)〜E)が考えられる。更に、これらを支える具体的な事実や事柄は種々あるが、例えば幕府の政治組織としては守護・地頭の設置を重要な要素と見るが、政所・問注所・待所の設置は副次的要素と考えるなど内容の厳選を図ることにした。
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社会科の授業風景
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◎○重点をかけた単元 △時数を減らした単元
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