教育福島0002号(1975年(S50)06月)-023page
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理科学習において、科学の方法が強調されている。それぞれの内容を学習する過程の中で必要に応じて取り上げるような指導上の工夫が必要である。クラブの指導にしても、条件制御にしても、学習の始めに時間をかけて指導すれば、その後の学習はだいじょうぶというものではない。これらの学習は、その必要があるとき、そのつど適切な指導がなされることの方が望ましい。この意味で科学の方法の何を、どの教材を使って指導するかを明らかにし、指導計画に位置づけることが必要である。
一時間の指導案を見ると、探究の過程が一通り組み込まれているのがよく見られる。それだけの学習が一時間のうちにできるか疑わしい。科学の方法も計画的に取り上げないと時間不足はまぬがれない。
(4) 実験・観察からの精選
1) 探究学習は、一人一人の児童・生徒が直接実験し、観察しようとするような行動を基盤として成立する。従って、そのような行動をとりにくい内容は精選の対象として考慮する。
2) 実験の方法を改良し、新しい実験を取り入れることによる精選も考慮する。
3) 指導目標に照らして、その必要性・重要性を検討する。
(三) 教材精選の手順
(1) 単元・一時間の基本的な目標を明確に抑える。
(2) 教材の構造を明らかにし、それぞれの指導事項が基本的概念(中心的概念)とどの程度強く結びつくのかをとらえる。また既習経験との関連を検討する。
(3) 探究の過程をどのように取り入れるかを決める。
適切な教材であれば、探究の全過程をたどるのも可能であるが、教材に応じた過程を計画的に構成することが必要である。実験も児童・生徒実験か、教師実験か、そのねらいと内容により検討しなければならないし、取り上げる材料についても吟味しなければならない。
二、教材精選の実践例
いわき市立小白井中学校
(一) 精選の基本的な考え
精選の基準が、探究過程と科学の方法と基本的科学概念から教材を検討し一般的内容と特殊的内容をどう結合すれば、自然科学の構造を明らかにできるか、そして理科の目標達成ができるかにあることは知っているが、精選を底辺から見たとき、これだけの基準では生徒不在の精選となる。「考える楽しさ」を身につけるために、知的好奇心を高め、生徒の直接参加を期待するという観点で考察する必要がある。
そのためには、中学生の科学的思考の発達過程が論理的思考の形成期にあり、自然認識の発達過程では、知識・概念等の知力を中心にした認識にあることを踏まえねばならない。
連続性を持つ自然科学の中から選択された教材は、断片的存在である。これをもって自然科学の構造に迫るためには、思考作用を重視しなければならない。
図1 基本概念獲得過程
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この作用が知識や概念に転移力を持たせることになる。よって、学力の形成を次のように考えた。
図2 理科学力形成過程
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単元「物質と原子分子」の二十五時間のうち、「物質の変化と質量」十七時間扱いに、思考活動の直接参加が期待できるよう、量と質の両面から検討した。
(二) 教材を精選するに当たって
(1) 燃焼とは、紙や木のように、炎を出して燃え、生成物はすべて灰となって軽くなる(六十一パーセント)と受け止めていることを事前調査で知った。そこで、六項目で質量保存則に迫るのを改め、スチールウールを導入として(表中1))、生成物の質量増加に矛盾を抱かせ、知的好奇心の高まりを期待する。よって、指導順序と項目量から検討する。
(2) 論理的な思考を高めるという観点から、質の高い実験装置を検討する。
(3) 熱・電気エネルギー概念の指導が現象と遊離された形で行われているが、ここを質の面から精選し、「化学変化はエネルギーと〜」表中16)の学習内容を硫化銅の生成10)と水の分解13)に(2)と関連づけて設定する。
(4) 化学変化の基礎概念の理解をいっそう深めるため、六項目の指導項目を三項目に精選し(表中※1・※2)その時間を酸化鉄、酸化銅、硫化銅にかける。
(5) 質量保存則を理解させるのにスチールウールの燃焼を扱っているが、班ごとに質量を変えての燃焼とすれば、定比例の法則に迫るための資料も得られ、実験の重複が避けられる(3))。
(6) 測定誤差の大きく出る実験は、精選の対象とする。この観点から、マグネシウムの燃焼と水の合成、酸化水銀の熱分解の定量的なとらえ方は避ける。
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