教育福島0004号(1975年(S50)08月)-008page

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あるいは「気づ」いたことになるのか確認できるであろうか。生徒が実験をすれば必ずその状態や性質に「気づく」ものだという保証のないことは、多くの教師の経験していることである。したがって教育工学的考え方では、このような「理解する」「気づく」「感じる」「知る」といった行動として確認できない曖昧な表現を用いないことになっている。そして、児童・生徒の「できるようになる行動」として表現するのである。たとえば「……を暗唱できる「……を指摘できる」「……を作ることができる」「……の相違点を言うことができる」といったオバートな表現方法で表すわけである。

第二の問題点は、教師の表現行動がシステマティックに整理されていず、学習者の能力から見て飛躍がある場合である。今日の学校教育での「ついていけない子供たち」を作る根本は、与えられた課題のレディネスが学習されておらず分からないものを分からせようとすることである。これは、学習者の自己学習を伴っておらず、「行動しつつ学ぶ」原則を無視するものである。

第三の問題点は、教師が、学習者の反応をじゅうぶんには握できず、したがって適切なフィードバックが与えられない場合である。フィードバックは前にも述べたように反応した直後になされることが最も有効なのであって、そのタイミングが重要である。

 

三、機器利用の適性化

 

一と二で述べたように、教育工学は単に機器の利用にとどまらず、従来の教授=学習過程が持っている様々な欠陥を除去し、コンピューターのような正確な制御装置を教育の中へ取り入れようとするものなのである。したがって教育工学への取り組みは、授業分析をじゅうぶんに行い、よき教授=学習過程のモデルを検討し、それに対応して、機器の利用が適切に行わなければ二で述べたように様々の失敗はまぬがれない。また仮に教育機器がじゅうぶんに備えられていない場合でも、こうした教育工学的な考え方というものはいくらでも授業の中に生かせるのである。授業の中での様々な失敗の原因を分析したり、予想される児童・生徒の学習プロセスをシステマティックに考え、フローチャートで書いてみるなどの作業を行うことも、教育工学的考え方なのである。

教育機器は、前にも述べたようにそこにあったから使うのではなくて、システマティックに計画された授業計画を実現する手助けとなるものであるから、その教師の意図的働きかけが主体であり、機器は従であることを忘れてはならない。それは、教授=学習過程のサーボ機構が教師自身であることである。

 

=解説=

教育機器の特性と活用上の留意点

福島県教育庁義務教育課主幹 丑込幸男

 

一、教育機器について

教育機器と称されているものは実に多種多様である。それぞれの立場によって類別の仕方が違う。いわゆる視聴覚教材と教育機器との関係も判然としていないのが実態のようである。

例えば、次のような分類がある。

 

教育機器の類別  (注1)

また、機器をハードウェアの機能から見て、次のようにも類別される。

 

また、機器をハードウェアの機能から見て、次のようにも類別される。

(1)光学的機器 (2)音響的機器 (3)映像的機器 (4)システム機器 (5)教育工学的機器等である。このようなさまざまな類別がなされているのは、教育機器の持っている機能が複雑に重なり合っているからであり、また、教育機器の研究が始められてから日が浅いことなどによるものであろう。

 

二、教育機器の特性と学習指導

 

教育機器には、それぞれの機能があり、特性を持っている。したがって、教育機器を使用して授業の効率を高めるためには、教育内容の順次性に基づいて、それに最もよく合う機器を、周到な計画によって活用しなければならない。教育機器に合わせて授業をするがごとき誤りがあってはならない。

(一) 教育機器の一般的な特性

1) 児童・生徒に印象深く学習資料を提示することができる。

2) 学習への興味・関心を持たせ、学習意欲を高めることができる。

3) 事物・現象の中から必要な事項を選択し、学習のねらいにそって再構成できるので、児童・生徒に問題の発見や理解を容易にすることができる。

4) 情報の提示が容易であり、知識の豊富な取得や経験の範囲の拡大を図

 

 

 


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