教育福島0004号(1975年(S50)08月)-022page

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4) 集合Bの要素であって集合Aの要素でない数は−4、4、12……などである。

5) 集合Aの要素であって集合Bの要素でないものは存在しない。

このことから、集合Aに属する要素はすべて集合Bの要素になっていることを導き、確認3の段階で再度学習課題についての反応を調べた。その結果をまとめると下の表になる。本時の展開は少しくどいようであるが集合Aと集合Bの関係をしっかりとらえさせるため、このような展開をしている。

 

三、実践例2

 

三、実践例2

次に、三年数材の「二次関数における定義域と値域」を取り上げ、それに用いた選択しとそれぞれに対する解答率を掲げてみたい。

(一) レディネステスト

問題 一次関数y=2x+1で、定義域を{x|−1≦x≦1}とするときの値域を求めよ。

選択し1){y|−1≦y≦1} 5%

2){y|−1≦y≦3} 79%

3){−1,0,1,2,3} 8%

4)その他       0%

5)分からない     8%

定義域と値域のレディネスとして

一次関数を取り上げ、テストした。選択しの数は、有効選択しを三し、生徒の他の解答を取り上げたり、分からない生徒の状況をとらえるために、前掲したように4)、5)を加えて五し選択しを用いているのが普通である。

この教材では、75%以上でこの項を通過する予定で計画を組んでおりレディネスはそれに達しているので誤答や無答の生徒にその求め方を説明した上で、本時の学習課題に入っている。

(二) 学習課題

問題 二次関数y=3x2において、定義域を{x|−1≦x≦2}とするとき、値域を求めよ。

選択し1){y|3≦y≦12} 58%

2){y|0≦y≦12} 26%

3){y|−3≦y≦12} 8%

5)分からない     8%

この正解は2)であるが、予想どおり1)の誤答に半数以上が集まっている。そこでフィードバックシグナルを送り、誤答者に「どうして間違った答えが出たか」を発表させ、二次関数のグラフを基にして、正答の得られる過程を指導した。

この指導に対する理解の状況を見るために、

類題「前記の関数において、定義域を{x|−2≦x≦1}とするときの値域を求めよ」

について反応の状況を調べたところ正解は79%を示し、この有効度指数が72%であることから、指導は効果があったものと考えている。

なお、必要に応じて、記録装置により、反応状況を記録しておき、事後の個別指導に活用している。

(三) 練習

練習一ドリル一の段階では、進度状況に応じたボタンを押させ、それを見ながら個別指導に当たっている.

四、おわりに

ANを使った授業で、生徒の中には自分でよく考えずに、選択しを見て答えをさがす生徒がいる。また。同じ問題についてペーパーテストで答えさせ次にANで答えさせると、後者のほうの正解率が10%以上よくなることは度度ある。

ANによって解答させる場合、まず生徒の答が出てから選択しを示すとかできるかぎり偶然に左右されないような選択しを用意するとかして、より妥当なデータが得られるよう工夫していく必要はある。

しかし、いっせい指導で挙手により確認する場合が多いが、挙手と同時にボタンを押させてみると、80%は越えているだろうと思えるような挙手の数でも、それがなんと70%にも満たないことを知り、勘に頼っての授業の怖さをつくづく感じさせられるとともに、ANの威力をまざまざと見せつけられる思いである。今後、ANの特性を踏まえ、よりよい活用の仕方を目指して努力していきたいと思う。

(教諭 神山道夫)

 

□考察□

 

学習の効率を高めるには、どうしても学習者である児童・生徒の実態を正しくは握し、それに応ずる指導や援助の手を差し伸べることが必要である。塩川中のANの活用は、まさにこのことを実証してくれたかのようなものでAN使用に多くの示唆を与えてくれるものとして、その価値は高い。特に、

○ ANの使用目的を明確にとらえている。

○ ANの長所とともに欠点をよくとらえてそれを補っている。

○ ANの活用の場を正しくとらえている。など注目したい点である。

中でも、生徒の反応を数量的にとらえ、それによって、補助説明、個別指導、即時に有効度を数量的にとらえてANの特性をじゅうぶんに活用した指導がうかがえる。また、選択しの提示の時期についても指摘しているがそのとおりで、選択しのいずれかに合わせるための学習の仕方は、真の学習ではないので、ともに反省していきたいものである。

ANの活用で最も大切なのはソフト研究である。中でも特に選択しをどのように作るかがANの特性を支え、授業の効率を高めるかぎである。

なお、選択しにかかわる研究は、教材の構造と学習心理の両面から、いっそうの研究を今後に期待したいものである。

 

 

 


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