教育福島0005号(1975年(S50)09月)-012page

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ある。したがって、教材の構成については量の精選より質の精選が強調される必要があり、多情報に対し精選や判断ができるための生徒の思考力を高めることが重要視されてくる。

 

二、歴史的思考力とは何か

 

社会的事象を歴史的に考える能力の内容としては、一般に、昔に関する意識、今昔の相違についての理解、変遷や発達についての理解、歴史的な因果関係をは握する能力、歴史の発展的理解などの諸能力がある。それらの諸能力は生徒の発達段階に応じて継続的、並列的に芽生えてくるものであり、次第に総合的な抽象的な思考力を伴う歴史学習へ発展するものと考えられる。

「歴史の発展的理解」は政治・社会経済・文化などの諸要素が互いに因果関係を持ちながら、相関連して時代から時代へと移り変わっていくことを、発展的に理解する能力である。

文化の総合的考察を一層深めるためには、関連的思考や発展的思考、総合的思考力の育成が必要である。

 

三、思考力を育てる学習形態と学習過程

 

日本史の授業形態には、講義、問答作業、討論、発表などの他に、フィールドワークや視聴覚教材などを利用するものなどがある。

(一) 講義を中心として、諸種の形態を取り入れる学習形態について

講義を中心とした学習は、基礎的知識の伝達や基本的事項について正しい理解をスピーディに得させる上では効果的である。しかしこの方法はややもすると教師中心となり、生徒は受身の姿勢を強いられ、歴史学習への興味や学習への意欲がそがれがちである。

歴史的思考力を育てていくためには教師の適切な発問により生徒一人一人の主体的な思考を促すとか、作業、討論、視聴覚教材の利用など適宜取り入れていくことが望ましい。

川俣高や保原高の定時制では、文字が読めない、教科書が理解できない、という生徒に対して「眠らせない授業」をモットーに毎時間一人一回は答えさせる問答学習や共同作業が多く取り入れられた学習が行われている。特に川俣高定時制においては、生徒一人一人に辞書を持たせ、説明したものを更に説明するという読解指導を中心に概念の再構成などの思考力を高めさせる努力が続けられている。

また、年表や地図の作成、時代のまとめなどを中心とした事象間の関連や相互の影響などについて思考力を高める学習が、各地区から報告されている。

視聴覚についても、各高校において多様な努力が行われている。周到に準備された教材によって各事象が引き起こされる条件や、これらによっての比較、関連、発展等の思考が容易にされている、との報告がなされている。特

ろうに聾学校において、絵の比較や要素の抽出できない生徒に対し「時間の概念」を植えつけるためのOHPやスライドを使った反復学習など注目される。

(二) 主題学習について

主題学習は今回より学習指導要領に位置づけられ、本年度研究集会の主要テーマになったものであるが、以下主な報告や討議についてまとめてみる。

(1) 年間指導計画に位置づけること

歴史的思考力を培う上で主題学習は優れた方法であるが、総時数が不足しがちであることから思いつきでは実施できないこと(梁川高)、したがって年間指導計画に位置づける必要があること、また学年始めに生徒に進度表やテーマ、問題を提示すること(大沼高)等が指摘されている。

(2) テーマの設定について

テーマの設定に当たっては、生徒の能力、興味を考えること。資料は全員が比較的簡単に入手でき、また十分な考証が行われていること、一読して時代の全体像のは握に便なるもの(只見高)から指摘されている。

テーマでは次のものが多い。

1) 人物を時代的背景の関連で学ぶもの。

女子高では女性史(白女高等)が多く、後白河法皇(磐高)信長、秀吉や幕末の人物が多い。

2) 文化の総合学習として授業を総括したもの。

日露戦争(明治の総括)室町時

代における民衆文化の成長と文化

の民衆化について(会高)鎌倉仏教の成立(磐女)浮世絵(東白農商)など。

3) 地域、郷土学習など身近かな資料からテーマを決めたもの。

夏休み前に調査の対象を指示し分担を決めて踏査したもので、写真や拓本、録音などと模造紙やOHPを利用した発表など、にぎやかで楽しいものである。場合に応じて全生徒でフィールドワークを織り込み、興味や関心をかきたてながら地域の特殊性を理解させるとともに、全体に迫らせるものである。

伊勢まいり(相女高)戦争と国民生活(小野高平田分校)親と子の歴史(福女高)などのほか、郷土の歴史、地域の成立、名号の由来、昔話・遺跡の由来、氏姓(会津二高)等が多い。また地域を総括しょうとしたものでは、平泉文と浄土教のひろがり(白女高)文治政治と保科正之(福西女高)相馬藩と製塩(原町高)和算(船引高)等がある。聞き取り調査では本宮高が優れている。

3) 文化の比較と発展を中心としたもの。

平安朝の文学(湯本高)仏教の歴史(本宮高)近代以前の東アジアと日本(磐高)などが優れている。

5) その他について。

歴史小説(「天平の薨」「青銅の基

 

 

 


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