教育福島0005号(1975年(S50)09月)-013page
督」「額田王」等)の読後感想文(南会津高)や卒業論文又は感想文(本宮高)を書かせる方法等多彩である。
3) 方法及び指導上の留意点
一般的には年度始めに生徒に趣旨を徹底させた後、五−七名のグループを編成し、グループごとにテーマを与え研究させる。作品中の歴史用語・固有名詞等については指示を与え、全員に教科書や辞書に当たらせ、授業時に適宜、質問を繰り返しながら、知識の定着や発表の方法などを指導しておく。生徒はややもすると枝葉末節の事項に深入りすることがあるので、個別指導が必要である。発表後は全員で質疑、討論を繰返して特定の事項の掘り下げや時代の全体像のは握に努めさせることが必要である(若商高等)。
4) 評価
評価については観察、発言の分析、作品の分析、テストの利用等があり、生徒の学習成果を明らかにして、成長発達の姿を客観的に捕らえたり、指導法や計画の改善が行われている。
主題学習を通じて「自分たちでやっているのだという気がした」「まとめるのは大変であったが、授業に変化があってよかった」とか「今までばく然としていたところが相互に関連し合っていることがわかった」等、生徒の感想が報告されている。
主題学習後感想文を書かせるとか、アンケート調査(梁川高等)等が非常に大きな意味を持つ。
四、まとめ
思考力を深めるための学習形態や学習方法を考えてきたが、学習は、学習の主体者である生徒と、学習を指導していく教師との相互作用によってその効果を高めていく。したがって、教材構成は学習を実質的に左右する「かなめ」とも言える。前項で述べた文化の総合学習のねらいを進めることを基本に置き、学習テーマに即した歴史的内容の理解と、その学習を通しての歴史的思考力の育成との両面からの教材研究が重要になっていると思われる。
数学科
行列の指導に関して
ベクトル・行列は現代数学の最も基本的な概念の一つであって、その利用分野は自然科学のみならず、社会科学人文科学等広範囲に及び、有用性の大なることは論をまたない。教材の立場から見ても、代数的、幾何的、解析的教材を統一的に扱うための一つの柱として現代化に沿った重要な中心概念である。このことから学習指導要領の改訂に伴い、新たに行列が加えられ、どのようなコースで履修する高校生に対しても、そのコースに応じた形で学習させることになっている。行列が教材として持つメリットは大きく、特に学習指導の上での豊かな可塑性は見逃せない。実際、最近の多様な生徒の実態にも適応して、生徒それぞれにそれなりの学習効果が得られているように考えられる。このことは各種研究会においての実践報告にも現れ、種々指摘されている問題点も否定的あるいは悲観的なものとしてでなく、今後の学習指導の改善に資するための提言として述べられているように思われる。
したがって、今後教材としていかなる角度からメスを入れられようとも、行列が高校数学の中に安定した位置を占めていくことは間違いあるまい。
これらのことを裏付けるように、今夏の教育課程研究集会でも、行列に関するものが最も多く、有意義な研究と実践の報告がなされている。
これらの中からいくつかを選び、観点を整理して、記述し参考に供したい。
(一) 行列の意味を理解させるためにどのような導入を図ればよいか。
行列はその演算が導入されて初めて意味を生ずる。したがって、その演算がどのように教育的に導入されるかによって、指導の成否が左右されるのである。
一般的には具体例によって導入される場合が多く、大部分の教科書も工場製品の生産高の表や生徒の何科目かの成績の表などを用いて、和、実数倍の導入をなしている。
2)Bの教科書における積の導入では、品物の値段を用いるものと、一次変換の合成を用いているものとがおよそ半々のようである。
このほか、既に学んだベクトルの演算がそのまま拡張された形で生かされるようにするには、行列についてどう定義すればよいかを考えさせる方法も効果的であるが、低学力の生徒には、具体例を先行させず、天下り的に演算を定義して演算の仕方が身についてから具体例によって演算の意味を考えさせるほうが理解させやすい、とする意見もうなずけるのである。
いずれにしても、生徒の実態に応じて種々の方法が考えられるので、教科書の例にしばられることなく、更に方法の研究が望まれるのである。
(二) 行列と一次変換との関連をどのようにつければよいか。
行列に関連する諸教材の指導上の相互関係は、一般に図1のようになるが、一次変換の位置づけは教科書によって異っている。
すなわち、
(1)演算を導入した後応用として扱う場合
(2)行列の積、逆行列の導入に用いる場合
(3)初めに一次変換を扱い、これを用いて行列を導入する場合
である。特に(1)の扱いが一般的であるように思われるが、そこでは単に応用としてだけでなく、変換・対応・写像としての解析的立場と、図形的性質としての幾何的立場とを融合し