教育福島0005号(1975年(S50)09月)-016page

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けであるが、これらの学習は多くの時間を必要とする。そのため指導に当たっては、年間の指導計画を十分検討し適切な教材を選定することが必要である。

(四) 生徒の実態

生徒の興味関心、既習経験のほか、理科の場合は、自然環境などの実態のは握が必要である。入試の成績や中学校の教科書などは一つの資料であるが学校独自のレディネステストなどは、更に効果的な結果が得られるであろう。これらの全体的な傾向をは握して、適切な教材を設定することが必要である。

また生物や地学の学習において、地域的教材を導入することは生徒の興味を高め、地域の自然に対する認識を深める上で効果的である。

 

四、おわりに

 

新教育課程実施上の問題点にかかわる理科指導のあり方を中心として述べたが、紙数の関係もあり不十分な点が多くなった。理科の目標分析によって指導内容が整理されたならば(1)基本的な科学概念とのかかわり合いはどのようになっているか(2)その教材は科学の方法の習得に有効であるか(3)生徒の実態から興味関心を誘発する教材であるか、など多方面からの検討が加えられ、教材の重点化を図ることが肝要である。理科の指導に当たり、この面での各学校の実践的研究が推進されることを期待したい。

 

音楽科

 

鑑賞教育の今日的課題

 

昭和五十年度の教育課程研究集会は特に鑑賞と創作を中心として研究協議がなされたが、それぞれの先生がたから実践的研究が持ち寄られて大きな成果があったように思われる。その中から当面する問題点をあげ、鑑賞教育の参考に供したい。

全国共通の研究課題は「豊かな音楽観を育てる鑑賞教育はどうあればよいか」という題であったが、鑑賞教育以前の問題点が出され論議を呼んだ。

 

一、マスコミ音楽と学校音楽

 

一般の生徒ばかりでなく、マスコミを通じて流される音楽が彼らの意識をつかんで、教師の努力にもかかわらずクラシック音楽へのアプローチが難しい、という声が各方面で聞かれた。このことは確かにうなずける一面もあるが、要は、この時点でとどまっていては問題の解決にはならないし、教育上の発展はない。

これに対応する音楽科の姿勢として一つはクラシック万能型、また反面ポピュラー全面導入型という対立した型両者の折中型等いろいろあるようであるが、音楽は人間性を基礎とした一元的なものであって、貴せん上下はないことを念頭に置き、教育的な分析を重ね、両者から適切な教材を選定する必要があろう。

 

二、鑑賞教育のあり方

 

仮に作品だけを単に並べて紹介するだけならば、鑑賞にはなっても鑑賞教育にはならない。このことは、材料だけ並べて調理をしない料理を与えるに等しい。全国の実態を見ても、漫然と生徒とともに聞くというケースは決して少なくないので、何を何のためにどう聞かせるかを、教師が常に点検し、反省したいものである。

また「クラシックは難しい」と言う生徒の多いことも話に出たが、作品の生まれた動機や、歴史的背景、作家の心情、楽曲構成等の知的理解はあればよいのは当然ではあるが、音楽は音を通じて感じるものであって、知的に理解するものではないだろう。したがって生徒の実態から判断してアプローチの過程がくどすぎたり、長すぎたりしないよう、教師の適切な判断を必要とする、

また、鑑賞の基本は作品を通じての感動であるから、鑑賞教材も、教師が実際に表現や鑑賞を通して感動を体験したものの中から、生徒の生がい教育の観点に立って、音楽を将来亨受するための基本となる音楽観が作られるよう、指導計画や効率のよい鑑賞教育の過程について教育工学的見地からの再点検を必要とする。このことは多様化した能力、適性を持つ生徒を対象とする現在及び将来の高校音楽科としてぜひ必要なことである。

 

三、鑑賞教育推進の留意点

 

(一) 「好きになる」

音楽的な感動を呼ぶ鑑賞を生徒が自覚するには、前提としてまず「聞こう」とする基本姿勢が必要であり「好き」にさせることであるが、このことは、学習意欲の喚起、動機づけを何によって行うかという問題と直結する。その際、鑑賞以外の他領域との関連を考えることがまず必要である。

例えば、歌唱や器楽の表現領域での生徒の演奏に対して、高い芸術的見地からよいものを引き出し、表現の適切さや生徒の表出したものに対する正しい教師の評価がなされた場合、生徒の自己は握も客観的なものとなり、更に自信を持つようになるという例は、多く見受けられることである。こうしたことで、生徒との間に音楽的なラポート、すなわち信頼関係が成り立ち、それは鑑賞教育及び音楽教育の望ましい大きな基盤となろう。

(二) ガイダンスと鑑賞教育

したがって、音楽教師が、音楽の専門分野にも常に向上心を絶やすことなく持ち続けることは大切なことであるが、指導技術の面で、例えば生徒理解の方法、特に観察指導等もにつけ、生徒の内発的な動機づけとともに外発的な動機づけがなされ

 

 

 


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