教育福島0005号(1975年(S50)09月)-018page

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ただ画一的に内容の枯渇したものにならぬよう視点を明確にするとともに、生徒の学習意欲を喚起させるような内容について、十分考慮することが学習を効果的に展開していくことにつながるものであると考えられる。

このようなことから、芸術科美術のデザイン指導については、職能的な技術指導に偏った内容にならぬように留意すべきではなかろうかという考え方が、今までの学習指導の反省として出されている。

確かに、デザインの場合は、絵画や彫塑よりも、表現の技法にいわゆる装飾性や視覚効果が要求されるので、例えば、絵画のように全くのフリーハンドで表現するというわけにはいかず、ある程度の制約があるため、そこに学習指導の難しさがあると考えられる。それに、今の生徒たちは一般にマスコミ化された視覚、聴覚に慣らされ、自分自身の努力で美的な価値を追求し、また、美的な価値に感応する心も弱まっていると言われている。

このようなことから、既成のものをまね、類似性の多い作品を作りがちであり、創造性の乏しいものに終わる傾向にあると言われている。

そこで、デザイン学習の場合は、題材に対する発想の段階で、生徒に対して内容についての意識作りを図ることが必要であり、そのためには、生徒の身近なところに視点を移し、郷土文化や、風土の中から芽生えた生活の様式及び用途品等の地域性に目を向けさせデザイン学習に必要な、生活に対する豊かな人間らしい心を養うことによって、内的な動機づけを行うための学習をまず配慮すべきであろう。

このような観点に立って、郷土を主題としたデザインの構想についていくつか考えてみると、

1) 四季の変化に伴う自然の美しさと、その自然との生活の中から作られてきた様々な民具類とのかかわりを結びつけ、その中から構想を練らせる。

2) 地域に伝承されてきた年中行事の姿と、古くから語り継がれてきた民話から、生活に根ざした地域性をとらえさせ、様々なイメージを追わせながら発想を豊かにし、それによりいろいろな構想を練らせる。

3) 地域の中で作られてきた民芸品を取り上げ、そのデザインの要素をとらえて発想を伸ばし、必ずしも既成の形にとらわれる必要のないように、これらを自由に生かしながら構想を練らせる。

以上、内容について三点を挙げてみたのであるが、更にそれぞれの要素を組み合わせて関連を持たせ、構想に一層の具体性を持たせることも考え一それとともに内容についての視点を明確にしていくことであろう。

視点については、前述したものを含めて挙げてみると、

○地域性の認識

○郷土文化と環境保護への関心

○学習意欲の喚起の三点に抑えることができるが、これらを、関連した一つの流れとしてとらえることも重要であろう。

次に、教材としての資料の準備であるが、資料の収集については、できるだけ生徒に責任を持たせ、それにより生徒が主体的に内容の理解に努めていくことをねらうべきであると思う。そして収集された資料が、生徒の意図する内容に合致したものであるかどうかについても、一応、生徒自身で検討させるような学習のあり方が望ましいのではないかと思われる。

生徒は、自己の発想が自分たちの生活と深いつながりがあり、更にそれが自分たちが居住する地域の過去から現在に至る歴史の流れの中で、それぞれの生活に生き続けてきた数多くの人々の心にもつながるものであると感じたとき、非常に強い意欲を示すものである。

この意欲を、創造的な過程の中で、デザイン学習のための内的な動機づけとして活用し、それを更に高めていくことに、学習の本当の意義があるのではなかろうか。

そして、またそこに、ここに至るまでの教師の適切な誘導が必要であり、学習の展開とともに、その誘導の効果が明確になってくるのである。

構想から表現の過程についても、生徒に自分の構想を表現するのにふさわしい要素を選択させて、ポスター、イラストレーション、エディトリアルデザイン等の表現を通して、自分が意図した作品制作への関心を高めさせていき、次第に創造的な能力を開発するための自己動機づけを図らせることに留意すべきであろう。

更に反省すべきこととして、今までコンクール形式のポスター制作を学習の場で取り上げても、生徒がそれに意欲を示すことは極めて少ないと言われている。

このことから、この種の外的な動機づけは、デザイン学習の意欲を減退させる一因であると言えるであろう。

そこで、現在の多様化した生徒の実態を考慮し、より人間的な心のかん養を図るため、地域の中に生き続けてきた生命へのアプローチが必要なのではないかと考えられるのである。

なお、県立田島高校では、「郷土を主題とした平面構成」を主題としたデザインの学習研究(昭和49・50年度県教育委員会研究指定校)を行っておりその一部が文部省編高等学校美術、工芸指導資料、「デザインの指導」(昭和50年10月発行予定)の中に指導実践事例として紹介されている。

 

外国語(英語)科

 

一、Student-centered

 

 

 


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