教育福島0005号(1975年(S50)09月)-021page

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家庭科においては、生活技術を習得させることが一つのねらいである。したがって、従来から実習指導の占める割合が多かった。しかし、文化遺産としての生活技術をただ伝達するにとどまり、実験に基づく科学的理論に裏付けられた実習指導が少なかったように思われる。今後はこの点を研究し、理論、実験、実習を有機的に関連づけて、総合的に指導することが大切であろう。

食物に関する学習では、次のような実習が考えられよう。

(1) 技術の訓練を主とする実習

調理実習のように、あらかじめ設定された方法をそのまま反復練習し、技術の習熟を図り、正確な技術の習得と緻密性の育成を目的とする。

(2) 実験的実習

いくつかの条件を設定して実験を行い、その結果を調理に活用して実習を全うする方法である。例えば、調理実験の結果を踏まえた実習などはこれに当たる。

(3) プロジェクト法による実習

生徒自らが、学習した知識や技術を基にして問題を発見し、解決の方法を検討し、それに基づいて計画立案し、実習を行う方法である。実習結果を反省評価して、次の問題解決の資料とする方法である。

以上の実習の特質を考慮し、関係科目の指導に当たって効果的に取り入れていくことが大切である。

 

四、実験・実習の位置づけ

 

食物に関する指導は、家庭一般、食物1)、食物2)などで行われる。これらの科目に実験・実習を明確に位置づけることが大切である。

家庭一般の指導に当たっては、実習を主体とし、家族の献立の学習と遊離しないように配慮し、実際に献立が立てられ、それに基づいた調理ができる力を十分につけてやりたいものである。

時間的制約もあって実験を取り入れることはできないが、理論や調理実習の指導に当たって、導入として教師の実験結果を観察させることも一つの方法であろう。

食物2)の指導に当たっては、理論Φ実験⇔実習の有機的関連を図り、総合的に学習できるようにする。この科目で取り上げられる実験は、目標、内容から見て、前述の(3)食品の性状や(4)調理操作に関する実験が中心となると考、えられるが、生徒の実態や履修単位数食物2)の関連等を考慮して、(1)や(2)の実験を取り入れることも考えられよう。

食物2)は、主として家政科や生活科で履修されている科目である。この科目の指導に当たっては、家庭一般、食物1の上に、更に高度な知識、技術が習得できるように配慮する。食物1)との相異を明確にし、様式別の調理実習に終わってしまうことなく、実験や実験的実習、プロジェクト法による実習など、生徒が主体的に実践活動できる場を多く取り入れて計画するようにしたい。

次の表は、家庭一般の実習題材、食物1)における実験題材の例である。

 

「家庭一般」調理実習題材の一例

「食物1」における実験題材の一例

 

「食物1」における実験題材の一例

五、まとめ

 

五、まとめ

食物に関する科目の履修は、学校により様々である。生徒の実態、科目の履修単位数、関係科目の関連等を考慮し、理論、実験、実習の有機的関連を図って指導計画に明確に位置.つけるとともに、教材研究を深め、施設・設備の有効な活用を図り、指導法の工夫をして効果を高めたいものである。

 

農業科

 

農業教育の改善について

 

一、農業教育の方向を考える

 

人間が、生きるための必要に迫られ人間愛に根ざして、有機的生命体を生産してきたのが農業であるとすれば、農業教育においては当然、食糧供給産業人、及び関連産業人の育成はもとより、人間生存の基本にかかわる自然生態系の維持発展も、今後、十分考慮していかなければならない。

したがって、今後における農業教育の方向は、一つは、食糧供給者の育成であり、二つは、自然循環機能の役割、そして三つは、自然的環境の中での、人間性回復の機能を推進する、高い立場からの教育でなければならない。今後の研究が進められるよう期待してやまない。

 

二、農業教育の基本的要素を考える

 

(一) 農業の本質を理解する

農業は、生物(作物や家畜等)の成長における生理や生態、育種の法則に、土地や気象や病虫等が、化学的物理学的、生物学的、地学的にどのようにかかわりあいを持っているのか、そのメカミズムの原則を知り、その原則に即して、人がこれを応用して、目的にあった生産物を生産するのが、農業であると言える。

つまり、農業は、いろいろと現象の変わる中で、変わることのない生命体について、栽培や飼育を通して、「生の論理」を追究していく役割を持つと言える。

具体的には、

(1) 自然と人間、生命と理性の調和を図ることである。

 

 

 


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