教育福島0005号(1975年(S50)09月)-022page

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(2) 自然科学と、理性と、生物を育てる限りない愛情とが必要である。

(2) 農業の発展方向の認識を深める

今後における農業の発展方向として考えられることは、

(1) 自然と人間の調和を図ること

(2) 食糧の安定的確保を図ること(社会の安定と国家の安全を確保する上で、欠ぐことのできない基本的問題としてとらえる)

(3) 生活環境の保全的役割を果たすことである。

(三) 農業教育の基本を考える(1) 農業教育の基本的観点

1) 未来を目指す人間の成長と発達の観点

(ア)自分の力で創意を燃やし、事に当たって、立ち上がる判断力が求められる。

(イ) 未来に対して限りない希望を持ち、常に、一歩前進を考える思考力と創造力が求められる。

(ウ) バイタリテーあふれる実践力が求められる。

2) 未来に向っての考え方の観点

単に、物質生活のみがよりよい生活のすべてであるという狭い価値観と、それを得るための手段が至上の目的であるという発想を改め、長期展望に立った生がいを通じての職業観と、自己実現的目標を確立することである。

(2) 農業教育の具体的観点

1) 人間教育を深めること。例えば「人生をどう生きるか、生きがいについて」「人間何をなすべきかについて」「生命と健康がなぜ大切なのかについて」「真の価値とは何かについて」もっと、もっと考え、親も教師も生徒も、ともに汗を流して働き、ともに喜びともに語り合う中から、人間のあるべき姿を学びとらせること。

2) 毎日の教育実践の中で、特に実験や実習を通して、正しい職業観勤労観を育成していくこと。

3) 農業のメカニズムを理解し、基礎的技術、経営能力が身につくよう指導すること。

4) 農村と農業を正しく認識するよう指導していくこと。

 

三、農業教育の改善のあり方について考える

 

(一) 教育目標の具現化(1) 理念的目標や、抽象的、不明確な目標を避け、学習指導要領総則に示している「地域や学校の実態、生徒の能力、適性、進路を十分考慮し、課程や学科の特色を生かした教育…」に即した、生徒によくわかる具体的目標でなければならない。(2) 学校、教師の教育実践の客観的な成果を検討し、目標設定に当たって十分配慮する必要がある。(二) 教育内容の精選と構造化農業科目は、基礎科目、生産科目、総合科目に分けられている。各学科でこれらの科目を履修する場合には、学科の性格や、目的、内容を理解し、これに即した科目を選び、これらの科目の構成について構造的には握し、体系的な視点から学習を進める必要がある、

例えば一粒の稲の種子から、数十粒を越えるもみを収穫するように、個体の増加を図るのが農業技術である。この生産過程における技術には連続的な性格があって、個々の技術の段階を切り離して指導することは困難である。すなわち、作物の播種から収穫、更に生産物の処理に至るまでの過程は、決して省略することができない。

また、移植の段階を考えても、苗の生育状況、ほ場の条件、気温等を十分考えて総合的に判断し、その時その場に応じて、適切な技術を加えていくことが要求されるのである。

したがって、学習の効果をあげるためには生産科目の一つの作目を慎重に選び、これを縦軸とし、基礎科目の内容を横軸として組み合せ、更に、総合科目の関連を明確にして、十分時間をかけ、徹底した学習をすることが大切である。つまり、地域農業の実態や動向等を勘案し、内容の精選と構造化を図る必要がある。

(三) 実験、実習の重視

農業における実験、実習には、四つの機能がある。第一は、座学で学習した内容の検証的実験、実習、第二は、理解援助的実験、実習、第三は、反復練習によって、技能の習熟と定着を図る実験、実習、第四は、生産方法を総合的に学習する実験、実習、である。

第一、第二は、主として各科目で実施し、学級単位に、主として実験的性格や内容について実施し、第三、第四は、主として総合実習において実施する。

したがって、科目と総合実習における実験、実習を明確にし、構造的には握しそれぞれの目標達成のため、効果的な学校農場の実験、実習、HP、SPのあり方等について十分検討する必要がある。

この場合、特に体験的実習は、将来における行動基準を決定する要因となるものであるから、一方的な管理作業の連続や、指導過程を無視した実習は避け、あくまで、年間指導計画に基づき、生徒が主体的に一貫作業の経験から、農業経営に至るまでの学習ができるようきめ細かな配慮が必要である。

(四) 教育方法の改善

農業教育においては、特に知的なもののほかに、「生の論理」を究明するための実践的能力が強く求められる。

したがって、教師の教え過ぎ、教えることに慣れさせる指導や、教えられることに慣れる学習のみでは、主体的学習は育たないので、常に、生徒の発達段階を考慮し、生徒が自から計画を立て自ら実践し、自らその成果について、評価、反省し、新たな情熱を燃やし、新たな内容に立ち向うことのでき

 

 

 


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