教育福島0005号(1975年(S50)09月)-025page

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力を十分に考えて、ここまでの指導を大切にしたい。

(三) 「簿記会計1)」については、上記の二点がのみ込めるようなら、仕訳はさほど困難ではない。取引の八要素については、B/SとP/Lの形が頭に入っていれば、いつでも取引の八要素の表は自分で作成できるし、財産の増減表で学んだ財産の増減を八要素に当てはめるだけであるから、急かずに十分考えさせて指導したい。借方、貸方という言葉は生徒が慣れるまで余り使わないで、左、右でもよいし、正式の仕訳帳の記入もここでは骨組みだけ指導したい。元帳の記入もT字型の元帳でよいと思う。

(四) 元帳転記はある程度機械的にできるので、試算表の作成の仕方と決算である。決算はいままでの仕訳と違って帳簿上の振替であるので、この点の説明が十分でないと普通の仕訳と混同しがちである。十分な指導が欲しいところである。

(五) 決算は英米式を中心として指導し仕訳の問題(十取引程度)を与え、決算まで二回ぐらい生徒に行わせる。戟@決算までのあとに、商品勘定については、一取引ごとに商品売買益を算出する分記法に比べて、三分法のほうがいかに優れているかを指導し、以後の仕訳は仕入、売上で行わせると同時に、売上原価の意味を十分に理解させる。「簿記会計1)」ではなんといってもここまでが基礎的な最も重要な部分であると思う。理解のできない生徒にはなんとしてもここまでは理解させたいものである。

(七) 学習意欲が出てくるのは、その教科が理解できるということに関係してくると思う。期末考査の後の時間を利用して、自分で簿記の問題を作成させ(教科書、参考書を利用して)交換して問題を解き合い、出題者に返して採点させて提出させる。出題者に対して質問する者、解答が出ない問題を作成する者、いろいろあるが、興味を持たせる点では一つの方法であると思うし、力のついてきた者は、教科書、参考書を使って作成する問題でもポイントをついた問題を作ってくれる。指導者にとつても楽しみでもあるし、生徒にとつても他人一級友一の問題を解くということで興味もわいてくるようである。

 

三、指導改善の方向

 

以上見てきた指導事例の中から、教師としての誠意、生徒に対する熱意、貴重な体験に基づく創意−−言うならば“教育者としての三意主義”が読み取れるのではなかろうか。このことは以下にあげる諸先生の場合にも共通しているところである。

○ 例え小人数でも、進度の遅れを見るような場合には、根気と愛情を持って特別指導を行い、絶えず同一水準にもってゆくよう心掛ける。学習内容に常に興味を持たせるため、雑誌・新聞記事などの中で生徒の関心を引く話題を教材の中に取り入れてゆく。(須賀川高教諭 大和田敬三)

○ 生徒の普通教科に関する基礎的事項の理解度、特に数的処理能力や文章の読解力の不足に十分着目し、簿記会計1)では、基本原理の理解が不十分な生徒に対して個別指導を行ってゆく。(西会津高教諭 筒井一夫)

○ 学習内容の理解度に落ちこぼれがないように、グループ学習(四〜五名)等の工夫をする。また、学科編成の特性から、農業クラブ、家庭クラブと並ぶ商業クラブの中に四コースを設け、上級生が下級生の指導に当たるなどの自主的学習の場を育ててゆく。(東白川農商高教諭大谷忠義)

原稿枚数の制約から割愛せざるをえないが、単独商業高校において科目ごとの校内共同研修の場があること、また、高教研商業部会では科目の系ごとに研究推進の委員会が形成されつつあることなど、今後の活動に注目したいところである。

「簿記会計I」をはじめ、商業諸科目の指導に当たって、生徒の学習意欲を喚起し学習内容の定着を図るため、指導改善の研究努力は今後とも重要であり、その基本方向は次のようにあげることができよう。

一、生徒の多様な能力・適性等に対応できるような指導計画を立て、努めて落後者のないようにする。

二、時には厳しく、また時には温かい励ましや忍耐が必要であり、教師と生徒相互の親和感を確立する。

三、学習指導だけでなく、「学業指導」

つまり、生徒が自ら学ぶという積極的、意欲的な学習態度を育てる。

四、機器利用、プログラム学習、範例学習等、現代化の方向も視野に入れまた、従来の指導方法や技術の再評価を図る。

五、商業教育のあるべき方向を考えながら紀、えず自己研修に励み、生徒とともに学ぶ謙虚な気持ちを持つ。

 

教科以外の教育活動

 

一、クラブ活動の充実

 

全学年がいっせいにクラブ活動を展開する時期を迎えて、今年度の研究主題である「クラブ活動の趣旨を生かして、望ましい集団活動を展開するためには、全体としてどのような指導計画を作成し、どのような指導を展開したらよいか」について協議された問題点と、その改善案をまとめてみよう。

(一) クラブ活動の趣旨とねらい

全般的には、ほとんどの学校が二年間の実践とその反省に基づいて、積極的に活動を進めている。しかし、一方では、全学年いっせい展開による施設の狭あいや、三年生の活動意欲の停滞

 

 

 


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