教育福島0005号(1975年(S50)09月)-041page
めている。
そのために、グループ編成をして、討論し合いながら、それぞれの仮説を検証する方向で研究が進められている。
一方、小学校は図中の△印の番号を付した地域で研修している。
各先生がたが、それぞれの課題をあらかじめ設定し、その解決のため、実習に臨んでいる。
図中の1)−4)までは、中学校1)−4)と同様であるが、5)では、地層の広がりを観察し、この地点で予想した地層の延長部が、他の沢にあるかどうかを確認したり、地層の上下関係(新旧関係)を話し合う。6)では安達太良火山の火口を観察して、別に準備した資料とを併せて検討する。7)8)9)では、檜原、秋元、小野川の三湖の水質、湖底の地形の観察、及び付近に分布する安山岩の組織、及び節理などの調査をグループごとに実施する。また、磐梯山から噴出するでい流の流路、及び範囲と三湖の成因について、その相互関係を話し合う。
10)では磐梯山のでい流のくぼ地に形作られた五色沼の成因と湖の特性、水の色などについて資料に基づき、現地で話し合う。
11)と13)では川桁断層を観察し、15)では、教科書に書かれているような小規模な断層と、地形でとらえるような大規模な断層との比較をし、構造運動を生じさせるための地球内部のエネルギーが大きいことを考える。
更に、14)では、猪苗代湖岸に出て、川桁断層と西岸一帯の地形と地質を比較し、湖の形成過程について、それぞれの独創的な意見やデータを基に検討を試みる。また15)では、新しい時代(第四紀)における構造運動を考えるため河岸段丘の地形を見て、段丘という構造の持つ意味について討論し合う。
16)では、温泉を運んでくる岩石(この地域では変朽安山岩の組成)について調べたり、福島県内に分布する温泉の特徴について、資料を基に検討し、郷土が持つ自然の特徴を知る。
18)19)では福島県で最も古い時代の岩石(結晶片岩)を観察したり、20)ではその次に古い花こう岩類を観察し、岩石を見る場合に、組織、粒形、配列などの観点で抑えていくことが、いかに重要であるかを知ることになる。台下は、逆に最も新しい第四紀の地層を見て、金で、福島盆地の地形を1)の場合での盆地のスケッチとを比較して、盆地特有の地形をは握する。
その日の最後に、このような一日の研修内容を総合して、福島県内における地盤運動の大規模な変化(水陸分布簡単な古気候の復元)を考察し、生きている自然の様子をいくらかでも、我々の働きかけによって獲得できるのだと互いに確認し合う。
三、科学の方法を経験をとおして知る
変化する自然の中に生活しておりながら、ややもすると私たちは自然の事象の成り立ちや、相互の因果関係を直接理解しようとする意識が薄れかけている。それは、余りにも日常生活が合理的になったことなどによって、その生活の背景にある自然の恩恵を忘れかけている。
私たちは、再び自然現象のいろいろの変化に心を向けて見なければならない時期に来ているとも言えよう。
現在の理科教育において科学の方法を習得させることが、子供たちにとっていかに重要であるかは、今更述べるまでもないが、そのためには、教師自身が自からの経験を通して体得してゆかない限り、本当の意味での指導が困難であると思われる。
今回実施している野外研修も、その意味から、かなりの効果があると、先生がたから喜ばれている。
ある一つの地層の前に立って、そのすばらしい景観に見とれ、一時の心を休めるのも、大変良いことであり、重要なことであるが、これに加えて、科学的な探究心を持って見ることもできるとすれば、更に有意義なものになるであろうと思うのである。
四、おわりに
野外研修も本年度で二年目に入り、今年も既に、一部は実施しているが、今後一層、所期の目的達成のため努力したいと考えている。
野外研修ルート,及び実験・実習ポイント略図