教育福島0008号(1976年(S51)01月)-009page

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特選論文 1)

指を使わないで誤りなく速く計算できるようにするための指導

安達郡本宮町立本宮小学校教諭 大塚 正伊

 

一、研究の趣旨

 

算数科の学習で、あまりにも数の概念が身についておらず、指を使って数える児童が多く、数を数えるのが遅いので、「たすこと」と「ひくこと」の指導をする前に予備テストを実施した。

その結果、10までのものを一対一に対応して数えられない児童が三五%、5以内の数の違いがいくつであるかわからない児童も三五%、10までの数の大小の比較ができない児童が二六%、10までの数の合成ができない児童が三三%、10までの数の分解ができない児童も三三%、20まで順序よく数えられない児童が二六%、20までの数の構成を理解していない児童も二六%であった。

これは、最近各家庭において、幼児期に必要な母と子、祖父母と孫の人間的な触れ会いを通じ、遊びの中から実物やがん具などの具体物を用いて並べたり、数えたり、比べたりするような経験が少なくなってきていることも一つの原因であるように思われる。

したがって、思考力も劣り、すぐ指を使って数えたがる児童が多いのであろう。そのため、10以上の数になると指の数がたりなく計算に困ってしまうようである。

以上のことから、できるだけ短い期間に指を使うことから離れて、具体物の操作を通じて考えさせ、具体物から半具体物へ、半具体物から数図(または数直線など)へ、数図(又は数直線など)から数式へと結びつけながら抽象化したり、どの場合でも同じ操作であることを理解させるようにすることが必要である。

また、そのような操作のほかに、視聴覚教材教具や教育機器なども利用して、視聴覚に訴える訓練の重要さを考え、頭の中で考え、すばやく計算できる児童に育成することを目指して、本主題を設定した。

 

二、研究の仮説

 

たし算、ひき算の指導をするに当たって、次のようなことを踏まえて、いろいろな経験を与えてやれば、指を使わないで頭の中で考えるようになり、誤りなく速く計算できるであろう。

(一) 具体物から半具体物へ、半具体物から数図(又は数直線など)へ数図(又は数直線など)から数式という手順で、同じ操作を繰り返させる。

(二) たし算、ひき算の計算のしかたを一人一人に言葉で説明させる。

(三) 教材を精選して与え、視聴覚教材教具や教育機器を適材適所に効果的に利用する。

 

三、研究計画

 

(一) 方法

一群法

仮説に基づいた検証授業

(二) 対象

第一学年 男二十二名女二十一名

計四十三名

(三) 段階

(1)事前研究(五月−六月)

○実態調査とその分析及び問題原因の究明

○文献研究

○検証仮説の設定と研究計画の樹立

(2)検 証  (七月−十一月)

○検証のための資料の準備(前提テスト、事前事後テストなどの問題の作成)

〇教材研究と指導計画及び指導案の作成

○教材教具の工夫と作成

OTP作りの工夫と作成・保管

○前提条件となる基礎事項の追指導

○前提テストとその結果の考察

○検証授業の実践と反省

〈第一次研究〉

・たし算(一位数に一位数を加える繰り上がりのない場合)

・具体物から手順よく数式へ

〈第二次研究〉

・ひき算(一位数から一位数を引く場合)

・一人一人言葉で説明

〈第三次研究〉

・たし算(一位数に一位数を加える繰り上がりのある場合)

・視聴覚教材教具や教育機器を効果的に利用

○変容調査(事前、事後テスト)と

比較考察

(3) 整理  (十月〜三月)

○追跡調査(は持テスト)と指導効果の判定

○研究のまとめと反省

 

四、概要と考察

 

(一) 経過

研究の趣旨でも述べたとおり、授業をしていて、数の概念がよく身についていない児童が多く見られる。そこで、予備テストを実施し、その結果から児童の実態をは握し、問題

 

 

 


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