教育福島0008号(1976年(S51)01月)-017page
ながら、数学教育の現代化の方向に添いつつ、数学的な考え方を伸ばしたいという考えから本主題を設定した。
二、研究の仮説
一時間の授業に、次の各の事項を取り入れて指導に当たれば、学習の目標を効果的に達成することができ、数学的な見方・考え方の育成を図ることができるであろう。
(1) 教材の基本となることを抑え、既習内容とのつながりを明らかにしながら、教材のしくみに着目させる。
(2) 導き出された数学的事実は、他の関連する数学的事実と結びつけて数学的きまりを考察し、概念を豊かにする。
(3) 問題の解決は、数学的なしくみとその考え方に着目させ、数学的手法のよさを学び取らせる。
(4) フィルター方式による授業記録を基にして授業診断をし、生徒の数学的思考の様相を追求する。
(5) 指導内容のミニマムを設定し、教材内容を系統的に抑える。
三、研究計画
(一) 方法
(1) 実態調査と問題点の分析
(2) 文献研究と仮説の設定
(3) 指導計画の作成と教材の分析
(4) 仮説に基づく学習指導案の作成と
検証授業
(5) 一群法による検証
(二) 調査研究
(1) 学力の実態調査
(2) 学習態度・意識に関する調査
(三) 研究の段階
(1) 主題設定と事前研究 (昭和四十七年五月〜七月)
1) 実態調査による問題点のは握
2) 仮説の設定と研究計画の立案
(2) 検証 (昭和四十七年八月〜昭和五十年三月)
1) 仮説に基づく指導案の作成と検証授業の実践
2) 諸調査の実施と結果の分析及び検証
(3) 整理 (昭和五十年四月〜八月)
1) 仮説の検討
2) 資料の整理と研究のまとめ
四、研究の概要
(一) 研究の過程で基本的に抑えたこと
(1) 学習指導をどうとらえたか
従来の授業展開を見てみると、教師側にしても生徒側にしても、その授業を「何のために(目的)」「何を(内容)」「どのようにして(方法)」行ってきたかということへの意識・関心が薄かったように思われる。学習指導は、これら三つの観点に分類されるとはいえ、それぞれ関連を持つものなので、次のような抑え方をして指導に当たった。
1) 目的については、教材∩指導法学習指導⊂教育と考え、それぞれ育てようとする生徒像に焦点づけて授業を進めた。
2) 内容については、これから解こうとする問題は、何が基になって作り出されたかを、原点にもどりその問題に貫かれているものの基準を学習指導要領に求めた。
3) 方法については、目的、内容との関連を踏まえながら、実践を通して命題に迫らせた。つまり、このようにして解かれてきた数学は帰納や類比などによって生み出されたとも考えられるので、教師側の教材研究を大切にした。
(2) 学習過程をどのように構成したか生徒たちの学習活動の様子を見ていると、与えられた教材を受身の形で学冒し、その内容を学び取っている。やはり、教材は主体的に受け止め、何のκめにこの問題を解こうとしているのか、自分の問題として解決に迫る活動でなければならない。そこで、次のような過程を踏まえて指導に当たった。
1) 学習の問題をよくみつめ、既習の経験に照らして問題内容のしくみを考える。
2) 学習問題のしくみを既習内容と比べ、相異点を明らかにする。そして、どこに、どのような手を加えたら、しくみを理解することができるか予想を立てる。
3) 予想に従って解決し、その結果が解決過程における考え方、処理のしかたについて誤りがないか、数学的なきまりに照らして確かめる。
4) 考え方や手法、まとめた法則は他の問題に適用できるかどうか確かめる
(3) 授業を進める上での留意点を、どのように抑えたか。
1) 既習内容と本時の内容の関連。
ア、具体的な事実から数学的な場面を身近に感じさせるよう設定する。
イ、生徒が理解している既習の概念を大切にし、学習の素材と、本時の学習で明らかにしたい問題を、はっきり分離する。
2) 解決の計画を立てる。
ア、教具や資料によって、学習活動の操作や思考を具体的にする。
イ、解決の基礎になる本質的なものに目を向けさせ、考える場面と時間の設定を工夫する。
3) 解決した結果を検討する。
ア、生徒の見方、考え方を整理し、統合し、明確にして適用場面を考える。
イ、数学的な理論を大切にし、その成立するわけを確かめながら、数学で使う約束は積極的に取り入れ、そのよさを知る。
(二) 授業への取り組み
実際の授業を進めるに当たり、次のような内容と方法で取り組んだ。(1) 数学科指導内容のミニマムを設定する。
中学校三か年間の数学科の指導内容