教育福島0008号(1976年(S51)01月)-022page
の対応→一意対応→関数の意味という順でやってきたが、生徒は興味を持って学習に参加し、対応図の表し方、一意対応の判別が理解されたように見られた。特にグラフを用いて、一意対応判別の理解を図ったが、これは効果があったように思われる。
上位群は、一意対応の発見、関数の判別は、完全に習得したように思われる。
(2) 対応の図を中心にして規則性を発見させる指導はどうであったか
対応の規則一式一から対応へ、対応から対応の規則(式一への両面から、規則と対応を結びつけて指導を加えたし、その指導の中心を対応の図に置き式←→言葉←→対応図のステップに効果があったように思われる。
また、対応図の規則発見型は、生徒は興味を持って学習したようである。ただ、y=3xのような式の規則は、式と対応が関係づけられず、誤答になったものが下位群に多かったように思われるので、グラフから対応図、対応図から規則発見の二段構えに問題があるように思われる。
(3) 実際的な例で、対応に着目し、関数的な解決の指導はどうであったか
1) 対応に着目して解決する文章題では、なんらかの形で対応させることができるようである。
2) 上位群、中位群の生徒は、対応からその規則性が発見できるようである。また、下位群の生徒でも対応図から規則性を発見し、式化にもっていったほうが効果があるように思われる。
3) 全般に、二量を対応させて、その規則を見つけ、解決しようとする生徒が多くなったようである。
4) 下位群の生徒で、与えられた対応図から規則を発見し、自らの手で対応に着目し、図表現まではできるが、規則発見が困難な生徒が見受けられる。
(三) 結論
授業において、数学的な考え方が顕著に現れる場をとらえ、数学的な考え方を有効に使われなければならない。
(1) 既習内容とその授業で学習する内容との関連において
1) 具体的な事実から、数学的場面を身近に感じさせる。
2) 生徒の理解している既習の概念を大切にする。
(2) 解決の計画を立てること
1) 解決の基礎になる本質的なものに目を向けさせる。
2) 教具や資料によって、学習活動の操作や思考を具体的にする。
(3) 解決した結果を検討すること
1) 生徒の見方、考え方を整理して統合し、明確化する。
2) 数学的な論理を大切にして、その成立するわけを確かめる。
3) 数字で使う約束(用語、記号など(は積極的に取り入れて、そのよさをわからせる。
そして、新しい情報と包構関係を結んで新しい概念を構造し、拡張する場である。すなわち、数学の学習そのものが、根拠となる事柄を基にして、新しい数学を作り上げていくと同時に、これらが使えるように訓練していくことが必要である。
七、研究の反省と今後の課題
(1) 授業過程の合理性の追求について
実際の授業を観察していると、ある事柄を気づかせたいという教師の意図に、生徒がなかなかのらないで同じことの繰り返しや、誘導発問によってむりな働きかけや、あるいはむだと思われるやり取りがある。ただ、このようなやり取りの中で、むだを整理して、合理的なものを作り上げていく授業のシステムを考えなければならなかったのではないだろうか。また、問題を解く場合など、一人一人の考え方に即して、よい仮説を立てなければならないが、生徒が持っている力を十分生かして問題解決ができるよう、誤らない見通しを立てさせることができたろうか。
(2) 情報提示と学習活動の指点について
学習活動というのは、教材提示に対する生徒の反応としての行動であり、数学的な見方・考え方である。この研究で採用してみた「授業後のアンケート」は、授業における教材の考え方、生徒の活動を生徒自身に評価させるということで、かなり的を得た結果が出てきている。
この結果から、授業過程が、情報提示→情報受容→学習反応→診断、評価の一連の過程において、コントロールされるまでにはちょっと距離がある。例えば、関数概念を育てるために、「集合を基盤にして、変化と対応を中軸に教材を抑えることが必要である」という、関数的教材の構造をとらえる視点は、授業過程の随所で強調されなければならない問題である。しかし、生徒の見方・考え方に堪えられるような教材研究を深められたろうか。いろいろなやり方や考え方を予想して、それを同一視できる基本になる事柄を抑えておく必要があったように思う。「数学の基本的な概念や構造に着目できれば、数学的な考え方として思考を発展させることができる」ことは、かなり明らかにすることができた。けれども、具体的な情報提示において、その情報には何が含まれていなければならないか、また、これに対する反応として、どのようなことを抑えていれば、次の学習活動に発展できる可能性があるか、などについて、診断と評価の視点を具体的に示すまでにはいかなかった、