教育福島0008号(1976年(S51)01月)-024page
この研究は、社会科における思考力と資料活用能力の育成を図ることをねらいとした実践記録である。
標準学力検査の結果を分析することによって、学級の問題点を洗い出し、研究内容を焦点化し、手順を抑えた計画の下に、論が進められている。
指導の基本過程を、問題は握、仮説の設定、検証、結論の吟味の四段階に抑え、思考の核となる教材を選択して、個人思考、集団思考の練り上げが図られている。検証に当たっては、二回にわたる授業研究によって指導効果の測定を行っているが、実践記録の整理にとどまっている。検証が主題に沿ってち密に行われるならば充実したものになると思う。
◇ 小川小学校戸渡分校教諭
渡辺 金次郎
「へき地における分校経営と教育活動の実践」
本事例は、人事委員会指定四級地のへき地学校において、地域の実態を踏まえながら、一人一人の児童が学習意欲を持ち、学び方を身につけ、創造的な思考と話し合いの力をつけさせることをねらいとして、指導の場の設定や放送教育の利用という立場から、地味ではあるが着実な実践をまとめたものである。
また、指導の効果を、1)放送教育を通して、学習に強い興味と関心を示すようになった 2)問題意識を深め、主体的に問題に取り組むようになった3)生活経験に共通経験が得られ、豊かな学習が展開されるようになった 4)生活態度も明るく協調的となり、語いが豊富になった、と述べられているが客観的(数量的)なまとめ方をして、成果がはっきり現れるような工夫が欲しかった。
◇ 渡利中学校教諭 今泉 清司
「校内放送の指導と運営」
校舎改築等に伴い、およそ二か年にわたって集会に必要な場所が確保できず、教育的コミュニケーションの活動上、不便をかこってきた学校が校内放送に着目し、これを学校運営全体の中に的確に位置づけることによって、問題の解決を図ろうと努力してきた成果である。
生徒の活動を中核としながら、組織や機構を吟味し、特に、長・短期の番組編成に当たって、全職員がその検討に参加していることは、大きな特色と言えよう。
また、番組は生徒指導と学習背景の充実に焦点を当て、制作過程にも生徒を積極的に参加させていることは、放送対象者との関係を好ましく整えている。
このような指導を繰り返す中で、発展の可能性や、問題の所在等を明らかにしていくことが望まれる。
◇ 下郷中学校教諭 岩沢 豊
「一人一人を生かすための書写学習の工夫」
書写指導の実践記録である。
技能を中心にした内容であるこtから、個人の能力差、意欲の違いに目を向け、一人一人の生徒が課題意識を持って、喜んで参加する授業を組織するために、実態調査から出発し、基本要素の指導、環境構成、用具の準備や学習方法等に工夫をこらすとともに、指導内容を明確に抑えるなど、授業のあり方を実践的に究明しようとした研究である。
書写指導は、研究対象としてあまり着目されていない領域であり、有効度の高い研究であるが、教育研究の手法により作業仮説を明確に抑えることや理論的な裏づけを確かにするなどし、授業分析や生徒の変容等を更に追跡されるよう期待したい。
◇ 錦中学校教諭 水野 武郎
「時間割編成についての考察」
中学校の時間割を生徒の心理状態、学習効率に着目して編成を試みたユニークな研究である。
時間割編成は、ともすると機械的に行われていく傾向にあるが、この研究においては、現行時間割の編成効率を具体的に分析し、学級・学年別、教科別の効率を求め、問題点を抽出しながら、効果的な時間割編成のあり方へと論を進めている。特に、知的教科と行動教科の効率を比較し、どのような組み合わせをしていけばよいかについて望ましい方向を示唆していることは注目に値する。
効率を生徒の意見を聞くだけで終わっていることは、客観性を乏しいものにしている。モデルプランを実証した資料があれば、もっと充実したものとなるであろう。
◇ 喜多方養護学校教諭 佐野 俊枝
「自閉的傾向を持つ児童の実践的研究」
本事例は、特に言語発達、知的発達に障害のある児童の指導記録である。
自閉的傾向を持つ児童の実態を知る資料を丹念に収集しており、指導の経過もよく記録されていて、他の参考となろう。しかし、主として観察記録のようで、どう指導したらどうなったかという教師の指導の手だてについての記述が物足りないように思われる。
このような障害を持つ児童に見られる一見特異な言動にも、一つ一つその児童の喜怒哀楽や、要求、期待等がこめられているものである。その意味を正しく理解しないと、他との接触障害を主障害とするこの児童の指導は教師の自己満足となり、適切な指導とはならないことに意を用いたい。