教育福島0020号(1977年(S52)04月)-029page

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れてくることはあまりないので、要は身体にも健康・不健康があるように、精神にも健康・不健康があるということ。精神の場合はすべてある程度まともな線をもっていて、それを健全に育成するんだということが全部だというお考えがあるんじゃないかと思います。身体的に病気があるとすぐ医者に行く、身体障害があればそれに即した方策を考える。精神も実はそうなんで、身体の一部と同じでありますから、ちゃんと出来上がった人もいれば、病気だったりこわれていたりする人もいる。

こわれていればそれに応じたやり方を考える。ですからほとんどの人は健康であれば、それは教育ないしは、少しくずれた場合は補導という面で対処できるでしょうけれども、中に一部病気である、または障害であるというのであれば、社会教育・補導ということでは適切な処置は出来ないでしょう。

各学校には校医というのがおりまして、校医には身体的なことは出来るが精神的なことは出来ない。今は精神科の医者も少ないですし、また精神医学の水準自体が未熟であるかも知れませんが、それは学校に精神科の校医または相談のできる顧問をおくとかして、現に人間の中には精神の病気もあり脳の障害もあるんだということをふまえた上で、学校教育というものを行わなければ問題もある。私は非行であるとか普通の子供がぐれたりなんかすることは申し上げられませんが、教育相談とか精神医学が、学校教育の中にはっきりと位置づけられなければこれからの学校教育はうまくいかないと思います。例えば、学習がうまくいかない、知能が低いとか、日本では今のところ小学生なんかで成績が悪いと精神薄弱児という考え方をしますけれども、アメリカなんかではラーニング・デスアビリテーといっています。教育をされる、勉強をするということも一つの神経の活動で、特定の能力がいるわけですが知能全体としては低くないのにかかわらず、そういうこの学習をするところの能力がおかされる。あるいは年をとって脳いっ血になったりすると、言語機能がおかされしゃべれなくなったり、あるいは子供のとき発達するときにそこが発達しなかったり、したがって知能としては異常ないけれどもしゃべる器官がうまくいかない。またはものを要求するところがうまくいかないということで養護学校にやられる。しかし、それは特定の能力がおちているので、その部分にはたらきかけて指導すれば効果があがる。そういう点で、先生がたはその子はその子なりにその能力をあげていって指導する必要があると思います。

司会

司会の不手際でじゆうぶん御意見をいただけなかった面もありますけれども、ここで今後の方針なり対策が確立されるというものでもございませんしそれをすることにはあまりにも問題が大きすぎる問題でもございますので、行政側に要望したいことという御意見をいただいたところで、教育長の方から主催者としてのお礼のことばも兼ねまして総括的にごあいさつをいただきたいと思います。

教育長

どうもこういう会議になりますと、非常にしかつめらしく、しかも抽象論・空想論に終わるのが常でございますが、今日はほんとうに身近かな問題としてこれをとらえていただきまして、それぞれの分野から、ほんとうにきたんのない御意見を拝聴させていただきましてほんとうに感謝にたえません。また同時に報道関係のかたがたには終始これに参加していただきましてありがとうございます。私、少年時代のことを考えますと親のいうことを聞かないと、学校の先生と巡警さまにいうぞといわれたもので、そうしてしつけをされてきたものです。これは親は親なりにとにかく言うことを言って、しかもきかないときには先生に言うということで、おのずから学校の先生にも内的権威というものを与え、同時に警察にも取り締まりの分野は別として、警察にもそういう内的権威がふ与されていたというふうに考えています。今までのいろんな分野からのお話を聞いていますと、親も自信がないんじゃないか。父兄もしかることを忘れて甘えさせているのではないか。学校も学校なりに親にも言うべきことも言わない。要田事件も早く警察に届けていれば、あるいは未然に問題は解決できた問題である。学校もなにか自分たちの体面上やるべきことをやらない。こういうことからいろんな問題が出てくるように感じられます。さきほどの須賀川のたいせつな子供に対しても何らかの前兆があった。これを一つ学校の共通問題として、このユニークな子供をどう扱っていくかということを、学校全体のふんい気としてこれを考えて対策を講じていくならば、この中に全力をつくした問題とも考えられます。私どもは、今日皆さんからいろいろ御指導を賜りましたところを基本に致しまして、今後それぞれの分野でじゅうぶん検討し、関係機関とも緊密な連携をとりまして、いいならされたことばではありますけれども、二度とこうした事実がおこることのないような配慮のもとに、誠心誠意対処して参りたい、このように考えているしだいでございます。

今日はほんとうに公私ともに多忙のおりから熱心に御発言御審議いただきましたこと誠に感謝にたえません。厚く御礼申し上げまして、この会を閉じさせていただきます。

 

 

 


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